テニスPRESSBACK NUMBER
錦織圭、勝負の綾はブーイング?
“ノーシードで最も危険な男”に勝利。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byTomoki Momozono
posted2015/05/28 11:20
全仏の日本人最高記録は、戦前の1931年、1933年に佐藤次郎が記録したベスト4。あと3勝で並び4勝で史上最高に。錦織圭はどこまでいくのだろうか。
「格下に順当勝ち」ではない神経戦。
手強い相手と警戒したことも、プラスとマイナス両方に作用したようだ。錦織は「クレーで強いとわかっていたので、いつも以上に身構えてしまった部分があった」と反省した。
どんな相手にも油断大敵で臨むのは当然だが、こうして「身構えて」しまっても厳しい戦いになる。トーナメントはそこが難しい。
錦織は、四大大会などの大会開幕前の会見で「組み合わせ表を見た感想」を聞かれると、必ず「1回戦の相手しか見ないので」と答え、決して先の展望を語らない。ベルッシのような難敵を一人ずつ倒していかなければ、何も起きないということを知っているからだろう。
試合を1行で要約すれば、「格下に順当勝ち」となるのかもしれない。しかし、これらの言葉は何も伝えない。錦織にとっては苦戦も覚悟で臨み、実際にひりひりするような神経戦を制しての、価値ある1勝となった。