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試合後に井岡一翔はなぜ涙を流した?
3階級制覇の陰にあった焦りと重圧。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byGetty Images
posted2015/04/23 11:30
接戦を制して、デビュー18戦目で世界最速となる3階級制覇を成し遂げた井岡一翔(右)。叔父の弘樹氏が4度挑んでかなわなかった井岡家の悲願を果たした。
待ち構えるのは、フライ級の“怪物”たち。
崖っぷちというプレッシャーをはねのけて3階級制覇を達成した井岡とはいえ、今回の勝利はまだ「生き残った」という印象が強い。世界王者という肩書きの価値が低下し、だれと試合をしたか、どんな試合を見せたかが問われる時代である。フライ級を見渡せば、昨年敗れたIBF王者のアムナット、WBAにはWBOタイトルも保持する“統一王者”フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)が君臨する。さらに、かつて対戦話が持ち上がりながら実現しなかったWBC王者の怪物ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)も控えている。
「これからも挑戦し続けて、まっすぐに生きていきたい」
厳しい戦国時代で再びボクシング界の頂点に立つべく、ひと回りたくましくなった井岡が新たなスタートを踏み出した。