サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
宇佐美貴史の芯には、謙虚さがある。
18歳で語っていた「天才と万能」。
posted2015/04/03 11:30
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph by
Takuya Sugiyama
ヴァイッド・ハリルホジッチ新監督の下で戦った新生日本代表の2つのゲームが終わった。
ともに勝利に終わったこと。ハリルホジッチ監督の会見での独特な言い回しやコミュニケーション方法。岡崎慎司が柴崎岳にゴールを譲ったこと。いくつかのトピックスはあったが、やはりこのインパクトは大きかった。
宇佐美貴史(ガンバ大阪)の日本代表デビュー。
“天才”と呼ばれてきた選手が22歳にして新たなスタートラインに立ったのだ。3月31日のウズベキスタン戦ではゴールという結果も残した。
小学生時代の「通算600ゴール伝説」。中学校でガンバ大阪の下部組織の門を叩いて以降、破格の飛び級を続け高校2年でトップチーム昇格を果たした。17歳と14日で公式戦デビュー。名門ガンバ大阪ユースの「最高傑作」とされ、2011年7月、19歳でドイツの名門バイエルンに移った。いっぽう、その後2シーズンを過ごしたドイツでは力を発揮しきれず、2012年のロンドン五輪代表ではポジションを獲得できないなど不遇の時期もあった。それだけに、今回のフル代表デビューのインパクトは大きかった。
「天才なんていないと思うんですよ」
3月27日のチュニジア戦、31日のウズベキスタン戦を目にして、思い出した光景がある。
2011年のシーズン開幕前にガンバ大阪のクラブハウスで話を聞いたときのことだ。彼はまだ18歳で、MF登録で、バイエルン行きがまだ噂に過ぎない頃だった。
聞いていた通り、チョイ悪な感じは確かにあった。その点は今も取材エリアで見せる表情と近いものがある。
しかし悪印象はなかった。ただ、あまりに堂々と意見を言い切る姿にこちらが圧倒されてしまった。
「天才なんていないと思うんですよ。そう思った瞬間にその選手は終わりですから。僕は一日の終わりにその日のプレー内容を必ず振り返ることにしているんです。練習の日もやります。いいプレーはもちろん、悪いプレーも振り返る。なぜそのミスが生まれたのか、原因を考えるんです」
本当に10代なんだろうか? そう思った。自分が何者か、知り尽くしたような言葉が続いた。
ガンバのアカデミー組織にあって「飛び級を経験し続けたから」だと言っていた。つねに2つくらい上の学年に放り込まれていた。体が大きい選手たちを相手にするには、考えるしかなかったと。
ただし、このコメントには少し引っかかるところがあった。