サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
宇佐美貴史の芯には、謙虚さがある。
18歳で語っていた「天才と万能」。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/04/03 11:30
柴崎らと共にチュニジア戦、ウズベキスタン戦と活躍したプラチナ世代の宇佐美。ロシアW杯へ向け、世代交代なるか?
代表デビューでは、多彩なプレーに得点も決めて……。
2015年3月。迎えた日本代表デビュー。
多彩なプレーでゴールに迫る姿があった。
チュニジア戦ではいきなりのヒールパスで度肝を抜いた。
これは直接的にゴールに向かうプレーではなかったものの、その後もペナルティエリアやや左から、香川真司のスルーパスを引き出して決定的なシュートを放った。
ウズベキスタン戦では、左サイドから右足で柔らかいタッチのラストパスを岡崎に通した。その後、左サイドをドリブルで突破し、左足でセンタリング。
ゴールを決めたシーンでは、中央やや右から抜け出して右足を振りぬいた。「前の試合で外していたので強いシュートを心がけていた」という。
さらに左サイドから右足で対角線に惜しいシュートも放った。
初ゴールを決めたウズベキスタン戦後は、多くのメディアに囲まれた。その表情は冷静ながら、相手の話にしっかりと耳を傾け、こう口にした。
「ボールを持ってからのプレーの多彩さはやはり自分の特徴ですから。この間のチュニジア戦ではオフ・ザ・ボールの状態から動き出してボールを引き出せた(香川のスルーパスを受けた状況)。そういった良さも出たと思います」
ヨーロッパでもJリーグでも“覚醒”できる証明を。
宇佐美の今回の「衝撃デビュー」には日本サッカー界への大きな示唆が込められている。
“覚醒する場所は、ヨーロッパでもJリーグでも関係ない”という点だ。
アタッカーならば、ゴールという“結論”にいつ目覚めるのか、ということになる。
例えば宇佐美の43倍も日本代表でゴールを重ねた岡崎慎司は、かつては「守備も献身的に出来て、ゴールも狙えるサイドアタッカー」だったはず。意識が大きく変わったのはシュツットガルトでのプレーからだ。筆者が2012年8月に話を聞いた際には「言葉でしっかりと自分の考えを伝えられない以上、ゴールに特化するしかない」「1トップでの出場にこだわる」と繰り返し口にしていた。
一方、宇佐美の今の姿は「海外」だけがすべてではないという点を示している。
欧州での失敗を経て、日本で覚醒した。場所はどこであれ、周囲との出会いや意識の持ちようで道は開けてくるという。
もちろん、宇佐美自身は今回の結果に満足しきっているわけではない。2試合とも途中出場でのプレーだった点だ。
「そこまで出ていた選手たちが、敵を疲れさせてくれていたところがある。だから僕らは後半途中に出してもらって、最後のとどめを刺すような感覚でプレーした。先発の選手たちの力があって、僕らが力を出しやすい環境になっていました。自分が何分出してほしいと言える立場ではないけれど、やはりスタートからやりたいという思いもある」