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トミー・ジョン手術で肘が強くなる!?
米国で囁かれる“都市伝説”の正体。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2015/03/23 10:30
ダルビッシュ投手は、トミー・ジョン手術前の3月8日、利き手である右手にグラブをはめ、左投げで練習に参加していた。
トミー・ジョン手術が増え続けるのは、信頼性の証。
もちろんチームからすれば、長いリハビリ期間を要するトミー・ジョン手術を受ける必要がないのが一番望ましい。
だが、ヒジに問題を抱えたまま期待通りの登板ができず、結局トミー・ジョン手術を受けることになるという方が、さらにリスクが高まってしまう。
そういったリスクマネージメントの見地から、じん帯が完全に断裂していなくともトミー・ジョン手術に踏み切るケースが増加の一途を辿っているといえる。それは裏を返せば、メジャーリーグ界(メジャーのみならず米国の野球界全体)でトミー・ジョン手術の信頼性が高いということに他ならない。
それでは改めてトミー・ジョン手術について検証してみたい。野球専門の情報サイト『The Hardball Times』が昨年の10月10日に、トミー・ジョン手術に関する解析記事を発表しているのだ。
そこでは3つの観点から、トミー・ジョン手術をデータ化し表にまとめている。
復帰に要する時間と、復帰率についてのデータ。
まず1つ目は、この手術の名前の由来となったトミー・ジョン投手が初めてこの手術を受けた1974年から2013年までの復帰期間と復帰率を年別にデータ化したもの。
それによると、復帰率はどの年代も高く88~92%で推移している一方で(ただし2012~13年の最新のデータはリハビリ中の選手も含むため76%に留まっている)、復帰期間は2005年までは平均で16~18カ月かかっていたが、それ以降徐々に短縮傾向にあり15~16カ月となっている。
ただし、最新の2012~13年は平均で13.8カ月となっているが、これもまだリハビリ中の選手が入っていないため、平均値が高くなる可能性もある。
記者会見場でジョン・ダニエルズGMは来年5月の復帰を望む発言をしていたが、このデータを見る限り14カ月間での復帰はかなり楽観的な見通しだということがわかる。