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トミー・ジョン手術で肘が強くなる!?
米国で囁かれる“都市伝説”の正体。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2015/03/23 10:30

トミー・ジョン手術で肘が強くなる!?米国で囁かれる“都市伝説”の正体。<Number Web> photograph by Getty Images

ダルビッシュ投手は、トミー・ジョン手術前の3月8日、利き手である右手にグラブをはめ、左投げで練習に参加していた。

メジャー投手の復帰率は78%?

 また表では復帰率は88~92%としていながらも、検証記事ではメジャーリーグの選手だけに絞るとその復帰率は78%だとまとめられている。決して楽観視できる数値ではないだろう。

 この表の抽出データには、かつてドジャースに在籍した台湾出身の郭泓志投手が含まれている。彼の場合、2000年と2003年に続けざまにトミー・ジョン手術を受けているのだが、1回目の手術後に復帰した扱いになっているようなのだ。

 彼以外にもトミー・ジョン手術を何回か受けた選手もいるはずで、やや復帰率の正確性には疑問を抱かざるを得ない。

 2つ目はトミー・ジョン手術の年齢別復帰期間と復帰率を表にしたものだ。これを見ると、27歳を境に明らかに差が生じている。

 まず復帰期間については27歳以下だと平均で14~15カ月なのに対し、27歳以上だと14~20カ月に上がっている(36~50歳が平均14カ月、32~33歳が15.4カ月と低いが、それ以外は16.9カ月以上となっている)。

 復帰率も同様だ。メジャーリーグ選手に限ると、27歳以下は復帰率が80%を超えているのに対し、28歳以降はいずれも70%台(36~50歳は66%)に留まっている。

 つまりダルビッシュの28歳は、まさに境界線上ということになる。

ダルビッシュの担当医師の手術数は100例以上。

 最後は医師別の執刀数を表化したものなのだが、手術の考案者であるフランク・ジョーブ博士(昨年3月に死去)の24例を上回る医師が2人存在している。

 ひとりは松坂大輔投手や和田毅投手も担当したことがあるルイス・ヨーカム博士で、66例を執刀している(このヨーカム博士も一昨年死去している)。もうひとりは、今回ダルビッシュを担当したジェームス・アンドリュース博士で、実に100例以上(表作成時点で110例)の実績を持っているのだ。

 つまりダルビッシュは、現在トミー・ジョン手術で最も実績のある医師の執刀を受けたわけだが、あくまでメジャーリーグ選手の復帰率は80%に満たないということを忘れるべきではない。

【次ページ】 米国球界に囁かれるトミー・ジョン手術の“都市伝説”。

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