野ボール横丁BACK NUMBER
打撃のための時間を、守備で稼ぐ。
巨人・岡本和真は清原になれるか。
posted2015/02/13 10:30
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
NIKKAN SPORTS
連日のように巨人のゴールデンルーキー・岡本和真の話題が新聞を賑わしているが、内容はバッティングのことばかりだ。
しかし、岡本がプロで活躍できるか否かは守備力にかかっていると言っていい。
高卒で右の大砲と言えば、真っ先に思い出すのが1986年にドラフト1位で西武に入団した清原和博である。清原は高卒一年目で、本塁打31本、打率.304、打点78というとんでもない数字を残した。
その理由として、元西武で現在は金沢学院東高の監督を務める金森栄治は「もっとも大きかったのは守備がうまかったこと」と話す。
「野球はバッティングだけじゃないですからね。守備が大事、特にプロ野球は。清原はスローイングが抜群でした。桑田より遥かにいい。やろうと思えばサードも十分、できたと思いますよ」
当時、西武には片平晋作というベテランの一塁手がいた。片平も決して守備の下手な選手ではなかったが、西武、巨人で「左殺し」の異名をとった西岡良洋もこう証言する。
「清原はゲッツーのときなんか、ものすごくきれいなボールを投げるんですよ。スローイングは片平さんよりも上だった。あと、体の大きさに似合わずハンドリングも抜群でした。ワンバウンドの送球になっても絶対、後ろに逸らさなかったですもんね」
守備の安定感が、清原を一軍に踏みとどまらせた。
実は清原の一年目はオープン戦、4月とさっぱりだった。オープン戦は打率.220(41打数9安打)、ホームラン0本に終わっている。シーズンに入ってからも開幕2試合目で初安打初ホームランを記録したものの、本格的に打ち始めたのはゴールデンウィークを過ぎてからだ。それまでにもスタッフの間では何度となく二軍降格の話が持ち上がっていたようだが、守備の安定感が清原を救ったのだ。
清原とは対照的に、同じく高卒の右のスラッガーで、流れに乗り損ねた印象が強いのは巨人の大田泰示だろう。最初は三塁を守っていたもののミスが目立ち、3年目の途中から外野にコンバートされている。