サムライブルーの原材料BACK NUMBER
まだまだ若い、いろいろとトライ。
遠藤保仁が語った「意欲と度胸」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/02/05 10:30
国際Aマッチ出場数152は世界歴代14位。現役ではイケル・カシージャス(スペイン)の160に次ぐ数字だ。
アギーレの与えた「自由」に見せた回答。
そもそも遠藤は、キャリアで勝負しようとしていない選手である。意欲で勝負しようとしてきたし、今もなおそうなのだ。
このパレスチナ戦では右インサイドハーフでスタートしたが、逆サイドに張るなどの大胆かつ自由自在なポジショニングで相手を混乱させた。
アギーレは攻撃のアイデアを選手の判断にゆだねていた。とはいえ、「自由」の表現こそが実は難しい。チームの立ち上げ当初は多少その戸惑いによって、連係にぎこちなさも見られた。
だが11月になってようやく呼ばれた遠藤は、アジアカップの舞台でその「自由」に対して意欲をぶつけていく。
「最低限の形づくりをしたら自由にやっていい、と。だからある程度は自由にやらせてもらっています。それがあるからこそ自分も(サイドに)張れるのかな、と」
自由を謳歌できる理由のひとつに、ザックジャパン時からメンバーが変わっていないという慣れの部分もあるだろう。だがそれ以上に、トライしてみようとする遠藤の意欲のほうが筆者には大きく見えた。
自由にやるために大事なことは「度胸」。
自由にやるために、大事なこと。
パレスチナ戦後にそんな質問が飛んだとき、彼はゆっくりと言葉のトーンを上げた。
「うーん、どうですかね。言うなら、度胸……じゃないですかね。やるか、やらないか。まあ僕の場合は何も考えずにやっているだけなんですけど(笑)。そういうトライができるかどうか。(自分の考えが)100%合っているわけじゃないんですけどね」
失敗のリスクはある。だがもらったチャンスをどう活かし、どう表現するか。度胸を持ってどこかで勝負に出なければ、信頼は勝ち取れないという思いもある。
チームにとっては大会に幸先良く入れるか、個人としては先発に定着できるかどうかの大事な試合。遠藤にとっては単なる初戦ではなく、今後の自分を左右する重要な一戦としてこの試合を捉えていた感があった。