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エースか、シンデレラボーイか。
スーパーボウルで考える「運」の力。 

text by

阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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photograph byGetty Images

posted2015/02/04 10:40

エースか、シンデレラボーイか。スーパーボウルで考える「運」の力。<Number Web> photograph by Getty Images

スーパーボウルの舞台で44ヤードパスというビッグプレイのレシーバーとなったシーホークスのクリス・マシューズ(左)。シンデレラボーイの座に手をかけていたが……。

スーパーボウルでもマシューズは獅子奮迅の活躍。

 相手のファンブルしたボールを素早くリカバーし自軍ボールにして、攻撃のチャンスをつかんだ。ここからシーホークスはプレーオフの歴史に残るような逆転劇を成功させ、スーパーボウルに進んだ。

 これで目が覚めたのか、はたまた神が舞い降りたのか、マシューズはスーパーボウルの舞台でも予想外の活躍を見せる。第2クォーターにはQBラッセル・ウィルソンからの44ヤードのロングパスをキャッチして、エースRBマーション・リンチのタッチダウンランのお膳立てをした。

 さらに第2クォーター残り6秒のところではパスキャッチに成功してタッチダウンを奪う。この日のパス獲得は100ヤードを超えた。レギュラーシーズンでは一度もパスレシーブを成功させたことのない男が、大舞台で大仕事をやってのけたのだ。

この男の運に、チームの命運を託す選択肢はなかったか。

 アメフットの試合を説明する時、野球にたとえるのはできるだけ避けるようにしているのだが(似ているようで全く違うスポーツだ)、ここはあえてわかりやすくするために禁を破ってみる。マシューズのカンファレンス決勝からスーパーボウルにかけての活躍は、ペナントレースで守備固めや代走しかやったことのなかった選手が、クライマックスシリーズで守備の大ファインプレーを見せ、日本シリーズ第7戦で先制安打とホームランを打ったようなものだった。

 もしシーホークスが第3クォーターまでのリードを守りきっていたら、マシューズはMVPになっていたかもしれない。そうなったら、スーパーボウル史上最大のシンデレラボーイとして名をとどめただろう。

 惜しまれるのは再逆転の可能性があったシーホークスの最後の攻撃だ。残り1ヤードでQBウィルソンはパスを選択した。8割がたはRBリンチかウィルソン自身のランと思われた裏をかくパスだった。レシーバーはエースWRのリカルド・ロケット。そのパスをインターセプトされて試合が終わった。この最後のパスの相手を、マシューズにする手はなかったか。カンファレンス決勝からスーパーボウルにかけてこの男が身につけていた運に、チーム全員の運を託して見る手はなかっただろうか。

 もちろんエースWRを選ぶプレーコールは間違いとはいえない。だが、スーパーボウルのような大試合は、見えない力も借りなければ、なかなかものにすることはできないのではないだろうか。

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