Jをめぐる冒険BACK NUMBER
好ゲームは決着後も“余韻”を残す。
天皇杯決勝、G大阪と山形の好感。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2014/12/15 12:00
敗れた山形の石崎信弘監督は「試合の入り方は悪くなかった。(ガンバには)J2にはない個の力があった」とコメントしている。
来季の課題は「J1での好成績」と「アジア王者」。
かつては攻撃の美学を貫き、ポゼッションにこだわっていたG大阪だが、その分スキもあったから、大一番を落としたり、下位に足をすくわれたりすることも少なくなかった。
一方、今は守備におけるスキが少なく、攻撃の形も、ポゼッション、カウンター、空中戦、サイド攻撃など実に多彩だ。そんなチームを、今野は「大人のチームになってきた」と評した。
戦況に応じて戦い方を自在に操れるという点で、今のガンバ大阪には、ザックジャパンやアギーレジャパンが惨敗を喫したブラジル代表とよく似た“したたかさ”が感じられる。
取材を済ませ、スタジアムから帰路に就く間も、両チームのことをぼんやりと考えていた。
山形は言うまでもなく、来季のJ1でどれだけやれるか。石崎監督がこの一戦で何を感じ、チームをどのように鍛え直してくるか楽しみだ。
ハードワークをベースにしたハイプレスのスタイルは、J2優勝の湘南ベルマーレ、2位の松本山雅とも共通するスタイルだ。もしかすると、来シーズンは昇格組がハイプレスでリーグをかき回すかもしれない。
一方、G大阪はアジア王者への期待が高まる。破壊力抜群の2トップはアジアでもゴールを量産してくれるだろうか。守備が堅く(失点数はJ1で2位タイ)、得点力もある(得点数はJ1で2位)。隙がなく、したたかな今のG大阪なら、Jクラブの早期敗退の流れを変えてくれそうな気がする。
そんなことを想像していると、来シーズンが待ち遠しくなってくる。試合が終わってもなお楽しませてくれるのは、この決勝戦が好ゲームだった証でもある。