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ルイス・エンリケが回す「好循環」。
カンテラへの信頼がバルサ再生の鍵。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2014/09/24 10:50
ルイス・エンリケは新監督ながら、リスクを恐れず多くの選手を起用し、チームの再生を急ピッチで進めている。
多方面に好影響を与える「カンテラへの信頼」。
しかし彼が態度で示す「カンテラへの信頼」は多方面に好ましい影響を及ぼしている。
まず、選手が気を引き締める。Bチームの選手は登録期間お構いなしでやってくるのだ。うかうかしていたらポジションを失うし、“後輩”に不様な姿を見せるわけにもいかない。
次に、カンプノウが盛り上がる。バルサのファンはカンテラをクラブの象徴と認めているからだ。また、カタルーニャ州内では無料で視聴できるバルサTVで、彼らはカンテラの試合を日常的に楽しんでいる。そのため、幼い頃から知っている選手がカンプノウのピッチに立つことを、古いソシオは自分の孫が成人したかのように喜ぶ。
最後に、カンテラそのものに対する刺激である。トップチームへの門が開かれているとなると、選手もテクニカルスタッフも、練習に試合になお励む。すると優れた選手がまた現れて、ルイス・エンリケに目を付けられ……。
そんな好循環がすぐに回り始めることは期待できないが、先日のサンペルのCL出場はカンテラ、ひいてはクラブにとって、何かのきっかけになり得る一大事だった。他のクラブに一度も属したことのない純粋なバルサ育ちが、初めてトップチームデビューを果たしたからだ。しかもポジションはバルササッカーの味噌である4番。6年かけても見つけられなかったブスケッツの控えが、カンテラから出てきたのだ。
今季のバルサはクラブ史上最高の約220億円をかけてスアレスやラキティッチ、マテューを獲得した。しかしシーズンのカギを握るのは、ひょっとしたらカンテラ組かもしれない。