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柔道・中村美里、アジア大会へ出陣。
ロンドンの挫折、膝の手術を超えて。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2014/09/15 10:40
現在25歳、中村美里が柔道家として完成する時期が近づいている。
練習を再開して数カ月で、講道館杯を優勝。
アンには北京五輪で敗れ、その後は2度勝利したものの、内容的には決して納得いくものではなかった。
ロンドンでは、試合開始早々に技ありを取られた。しかしその後中村は有効を奪い返し、猛攻を仕掛けた。アンに指導2つが与えられたことも中村が優勢にあったことを物語る。
結果は敗北に終わったが、アンを相手にそこまで出来たことは、まぎれもない進歩を示していた。中村も自身の進化を実感したのだろう。
「金メダルがどうこうじゃなくて、もっと柔道がしたかったです」
その言葉にも思いが表れていた。
中村が久しぶりに大会に姿を見せたのは、'13年11月の講道館杯。練習を再開して数カ月という状態でも優勝を飾り、復帰を印象づけた。
「納得できない試合でも、結果を残せたのはよかったです」
「4年に1度のアジアのオリンピック」
その後、膝に水がたまるなどして大会を欠場することもあったが、今年2月にはロンドン五輪以来の国際大会となるグランドスラム・パリにも出場している。
4月の全日本選抜体重別選手権では準優勝し、8月の世界選手権代表からは漏れたものの、アジア大会の代表には選出された。
「4年に1度のアジアのオリンピックなので、ものすごく大事です。自分の柔道をして1つ1つ勝って、金メダルを獲りたいです」
その後、7月のグランドスラム・チュメニ(ロシア)では優勝。2011年のパリ世界選手権以来、約3年ぶりとなる国際大会優勝を果たした。
そして今、アジア大会を間近にしている。
ロンドン五輪で金メダルを手にすることができなかったこと、1試合で大会を終えたことは確かに挫折と呼ぶべき体験だった。しかし、常に神経を払わなければいけない膝の状態でも成長することができたのを体感した大会でもあった。
それから不安を消すために手術に踏み切り、そこから復帰し、少しずつ実戦の感覚を取り戻し、積み上げてきた。
今は膝の状態はいいという。その中で、どれだけ自分の柔道をすることができるのか。どのような結果を残せるのか。
アジア大会は、静かに見据える先へつながっている。