オリンピックへの道BACK NUMBER
柔道・中村美里、アジア大会へ出陣。
ロンドンの挫折、膝の手術を超えて。
posted2014/09/15 10:40
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Shino Seki
9月19日から、韓国・仁川でアジア大会が行なわれる。4年に1度開かれる同大会は、幅広い競技が実施されることもあり、アジアのオリンピックとも言われる。
アジアでの大会とは言え、侮れないレベルにある競技も少なくない。また、今後へ向けての足がかりとする重要な場と捉えて臨む選手たちも多い。
柔道52kg級の中村美里も、その1人かもしれない。苦しい時期も長かったが、前を向いて少しずつ進み、今日まで辿りついた。
2008年の北京五輪には19歳で出場し、銅メダルを獲得した。成績もさることながら「金メダルを狙っていたので」と、メダル獲得にも一切喜ばない姿が強烈な印象を与えた。
その後、'09、'11年の世界選手権で優勝するなど、着実に結果を残した中村が、雪辱を期して臨んだのがロンドン五輪だった。北京で手にすることはできなかった金メダルをかけた大会だったが、初戦となった2回戦で姿を消すことになった。
相手は、金メダルを獲得することになったアン・グムエ(北朝鮮)。北京五輪の準決勝でも敗れ、最大のライバルと目していた相手と初戦で当たる組み合わせとなったのは抽選の綾だった。
中村「膝が治ったらどれだけ強くなるんだ、とか」
その年の10月、中村は左膝の手術に踏み切った。2カ月後、中村に話を聞く機会があった。
「まだ先のことは考えていないです。今は膝を治すことだけを考えています」
と語った中村だが、意外にも明るい展望を口にした。
「膝が不安定でそこまで出来たので、治ったらどれだけ強くなるんだ、とか思ったりもします」
左膝はかねてから痛めていたところだった。万全でない中で、常に世界のトップクラスの位置を保ち、ロンドン五輪にも出場した。
そのロンドンでの初戦敗退はもちろん、悔しかった。しかしその一方で、実は手ごたえを得ていたのだ。