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「まだ教えてもらうレベルじゃない」
コーチをつけない松山英樹の“思想”。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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posted2014/09/03 10:30

「まだ教えてもらうレベルじゃない」コーチをつけない松山英樹の“思想”。<Number Web> photograph by AFLO

現在プレーオフシリーズ真っ只中の松山英樹。最終戦「ツアー選手権」に出場できるかは今週末の「BMW選手権」の結果にかかっている。

ただ教えられるだけでは、発展的な関係にならない。

 スイングが人それぞれ違うのは、体の大きさや骨格、柔軟性といった身体的な特徴や、小さい頃からの癖といった、様々な要素が絡み合っているからである。大学進学後は「たまにいろんな人に見てもらったりしましたけど、その人“だけ”に見てもらうということはなかった。“その人にはどう見えるか?”というところが大事」というスタイル。それがいまも続いており、自分の動きの特性や傾向を勉強している過程なのだ。

「まあその分、すごく大変ですけどね……。そういう人がいないから悩んで、今みたいに悪い方向、悪い方向に行ってしまう。でもそれもね、しっかりスイングができあがったら、そういうこともないと思うんですよ。ある程度自分の中で(スイング理論を)確立できるようになってから、習うのがいいのかなと。その上で理論を聞いて、自分にプラスになればいいと思う。いますぐにそのコーチの話を聞いて、その人の言う打ち方、理論でやってみて、うまく行くとは限らないでしょう」

 教えを請うなら、それ相応の考えやスタイルを確立して、意見を戦わせるくらいの「自分」でありたい。教えられる側が、ただ従順なだけでは発展的な関係にはならないということだ。

ニクラウス「それこそが、彼がいい選手である理由」

 プロコーチの指導を仰げば「すぐにうまく行くかもしれない」可能性は認めている。ただ、特定の教えに傾倒したことで、そこに依存し、迷宮から抜け出せなくなる恐れだってある。

「教えてもらったら、耳がそっちに行って、いろいろ変えちゃう。それで壊れてしまうかもしれないのが怖い」

 松山がコーチを雇わない理由は、自分に“確固たるもの”がないことに加え、精神的にも未熟で、何かにすがりたくなる弱い自分を知っているからである。

 振り返れば、松山のそんな姿勢は伝説的なゴルファーにいち早く評価されていた。

 初優勝を遂げた6月のメモリアルトーナメント。松山は優勝会見で、現地の記者にコーチの存在について問われた。「スイングが崩れたら誰が治すのか?」と聞かれると「誰も治してくれない」と言い、会見場には笑いが漏れた。ただ、松山の隣に座っていた大会ホスト、ジャック・ニクラウスは間髪入れずに「それこそが、彼がいい選手である理由だ」と真剣な目つきをして言った。

 ゴルフのイロハを教わっている段階ではない。ただ今はまだ「どのコーチに教わるのが適切か」という自分探しの途中。松山がプロコーチをつけるとき、それはどっしりと地についた足を階段にかけるときである。

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