マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「ヤバイ」、外野手、あわてる選手。
甲子園で考えた、高校野球の“潮流”。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/08/23 10:50
外野手には強打者が多く、守備よりも攻撃に意識が偏った選手が多いことは否めない。しかしその中でも、健大高崎の外野守備は光っていた。
「攻めの守り」というよく聞くスローガンの実態とは。
「攻めの守り」
多くの選手たちが口にするスローガンなのに、いまだ一人として具体的に何をすることなのか、明確な答えを返してくれたことのない“謎のスローガン”だ。
その答えがこれである。
攻めの守りとは、打球の先回りをすることだ。
この打者はこれまで、どんな方向へどんな打ち方をしてきた打者なのか? ここまでがデータである。まず、これをインプットしておく。
もっと大切なのは、今日の“そいつ”である。なぜなら、実際に相手にするのは、今日のそいつであり、データが教えてくれているのは“昨日までのそいつ”でしかないからだ。
データで、とりあえずのポジショニングを推理しておく。相手のひと振りを見る。そのスイングスピードから、今日のウチのピッチャーの球威なら、どれほどの距離を飛ばしそうかを嗅ぎとる。
「前の肩が開くタイプだ……」。ならば、次のスライダーはひっかけるに決まっている。「左中間だ……」。センターが立ち位置をサッと変える。
案の定、甘く入ったスライダーをひっかけぎみに打った右打者の打球は、待ち構えていたセンターのグラブにスポッとおさまった。
このプレー、普通に見ている観客にとってはなんでもないセンターフライである。
しかし、一瞬、それこそ「ヤベッ!」と叫んだピッチャーはじめチームメイトたちにとっては、千金に値するスーパープレーである。
“外野”という名前もよくないのでは?
ヒマそうにしている外野手が多いのは、もちろん本人にも問題ありだが“外野手”という呼び名も良くない。
「外野は黙ってやがれ!」
最近はあまり使われなくなったが、日本のケンカの売り言葉、買い言葉の中には、こんな啖呵(たんか)がある。
横から何か言われ、関係ないヤツは口をはさまないでくんな!
つまり、外野とは「関係ない者」という意味でも使われる悲しい言葉なのだ。そんなニュアンスが、なんとなく外野手という言葉の中にも“匂い”として漂っていて、ともすれば遠くの出来事を人ごとみたいな顔をして傍観しているような外野手ばかり量産している。そう思えてしょうがない。