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チアゴ・シウバが語る母国でのW杯。
「今のブラジルは世界最高ではない」
posted2014/06/11 10:30
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
チアゴ・シウバのインタビュー。
この第2回では、「ブラジルサッカーは決して世界最高というわけじゃない」という、意外なコメントが飛び出しました。 第1回はこちらです。
――スペインとのコンフェデレーションズカップの決勝の前に、あなたはマラカナンのロッカールームでチームメイトにどんな声をかけましたか?
「僕のところにやって来たジュリオ・セザルとはちょっと話をした。彼は僕にこう言ったんだ。『チアゴ、今日は僕もみんなの前でちょっと喋ってもいいかな?』と。
だから僕も彼にこう答えた。『もちろんさ。セレソンはみんなのチームだ。君が話したいのならそれは素晴らしいことだし、キャプテンの僕にだけ話す権利があるわけじゃないから。今日は決勝の前に、すべての選手が話したほうがいいかも知れない。僕ら全員にとって、この試合は特別な瞬間であるのだから』とね。
それでジュリオはスピーチをした。彼は自分が苦しかったときのことをみんなに語った。インテル・ミラノというビッグクラブですべてのタイトルを獲得しながら、クイーンズパーク・レンジャースというより地味なクラブに移籍せざるを得なかった1年前の辛かった時期の気持ちを僕らに語った。家族もとても大変だったという彼の告白に、僕らは心を打たれた。
マラカナンのピッチに立つ前から、僕らはすでに震えていたんだ。訥々と語るジュリオの顔を見ているうちに、モチベーションは最高潮にまで達していた。そしてスタンドのサポーターたちが歌うブラジル国歌を聞きながら、それはさらに高まっていった」
「聞くたびに鳥肌が立つよ」
――その国歌ですが、いつもならば演奏が終わった後も観衆がアカペラで歌っていますが、あのときは突然音楽が止まって……。
「聞くたびに鳥肌が立つよ。すべてはフォルタレーザでのメキシコ戦(6月19日、2-0でブラジルの勝利)の前にはじまった。あの日、僕らは予感を感じていた。僕の隣にはジュリオ・セザルがいて、国歌吹奏が終わったときに後ろの誰か――マルセロかパウリーニョが『まだ動くな。もっと続くから』と言ったんだ。だから僕らも肩を組んだままずっと立ち続けていた。信じられなかったよ。
スタジアムの中であれほど気持ちが高ぶったのは、僕の人生で初めてのことだった。最高の瞬間だった。国中の街角で繰り広げられている民衆の運動とサッカーが共鳴しあったのだから。そうした運動からは浮き上がっているように見えたサッカーが、新たなエネルギーを引き出しながら民衆と連帯していることを示したのだから」