オリンピックへの道BACK NUMBER
世界ランクの1位と3位が日本人!
黄金時代は、競歩の歴史を覆すか。
posted2014/05/11 10:50
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
陸上のシーズンがスタートした。
2年後のリオデジャネイロ五輪をも見据え、各種目の選手たちの動向が楽しみなところだ。
その陸上界で、競歩の男子の充実ぶりが目立っている。
中でも主軸となるのが、20kmで世界ランキング1位の鈴木雄介だ。日本陸上競技連盟が定める強化指定選手の最高ランクである「ゴールド」に、今年3月、指定を受けた。ゴールドに指定されている他の選手は、ハンマー投げの室伏広治、昨年の世界選手権の女子マラソンで銅メダルを獲得した福士加代子の2人しかいない。成績を積み上げ、期待を集める存在になっているひとつの証明である。
現在26歳の鈴木は、中学生のときに競歩を始めた。そして常に、同年代のトップクラスで活躍し、期待を集めてきた。中学時代は、3000mと5000m競歩で中学最高記録をマーク。高校進学後はジュニアの年代の国際大会に日本代表として出場するようになった。順天堂大学に進学後の2006年には、世界ジュニア選手権10000mで銅メダルを獲得している。
'11年の世界選手権20kmでは8位に入賞し、ロンドン五輪代表に内定した。
本気で金を狙ったロンドン五輪では、36位と惨敗。
しかし、「金メダルを狙います」と誓ったロンドンは、苦い思いばかりが残る大会となった。スタートして2kmを過ぎると鈴木は先頭に躍り出る。勝つためには先行逃げ切りしかないと考えてのことだった。本気で金メダルを狙いに行っていた。そのまま8km過ぎまでトップを守ったが、後続の集団に吸収された途端、アクシデントが起きた。腹筋のけいれんだった。そのまま後退すると、巻き返しもならず、36位に終わった。
「実力がなかったということです」
と振り返った試合だったが、それがばねにもなった。ロンドン五輪後、フォームを見直し、スタミナの強化に取り組んだ。ロシアに単身渡り、当地でトレーニングに励んだ。その成果として、'13年2月の日本選手権20kmでは1時間19分2秒と、13年ぶりとなる日本記録更新で優勝。翌月の大会で1時間18分34秒とタイムを縮め、今年2月の日本選手権でも1時間18分17秒で日本記録を更新したのだ。