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野球界の重要テーマ“高卒1年目”。
松井裕樹で考える、金の卵の育て方。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2014/05/07 11:35
並み居るプロを圧倒する一球を投げ込んだかと思うと、対応力に欠け時に脆さを見せる松井裕樹。大投手への道を順調に歩むためにも、今は我慢の時なのではないだろうか。
自身のピッチングスタイルを再確認したかのような72球だった。
高卒ルーキー、楽天・松井裕樹が5日のイースタン・リーグの日本ハム戦に先発した。6回を4安打1失点9奪三振という上々のピッチングを披露し、再出発を果たした。
リズムのいい投球テンポ、変化球の切れ、その変化球を意識させながらのストレート勝負。
日本ハムの二軍本拠地・鎌ケ谷スタジアムで見たのは、高校時代の松井のピッチングそのものだった。
改めて、松井というピッチャーは、長所と短所が隣り合わせにあるピッチャーだと思った。
三振でリズムに乗り、四球で崩れる。
追い込んだ時のピッチングは圧巻だが、バッター有利のカウントになると脆さを見せる。投球術的にいうと、カウントを取る球種がほとんどないという高校時代からの弱点は、今も消えてはいない。
一軍の4試合では23三振、24四死球という状態。
この日の試合ではほとんどの打者を追い込むことはできたが、唯一4回裏、1死三塁で金子誠を迎えた場面で3ボールと先行し、ワンストライクを取った後、甘いストレートを左翼前にはじき返されている。
一軍での登板4試合を振り返っても、デビュー戦となった4月2日のオリックス戦では、6回3失点6奪三振と好投。しかし残りの3試合はボールが先行し、四球を連発していた。一軍で登板した4試合で、19回1/3を投げ、23三振、24四死球だった。
ここで考えてみたいのが、松井のような高卒1年目投手の起用法についてだ。
昨年もこのコラムでは、この問題について取り上げたが、継続して提起していきたい。
というのも、この1年間取材を進めるなかで、その難しさを語る言葉をいくつも聞いてきたからだ。