ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
パッキャオ、メイウェザー時代終焉?
村田諒太が挑む次世代の「王」争い。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAFLO
posted2014/04/29 10:40
4月12日のブラッドリー戦を制し、2年ぶりの王座返り咲きを果たしたマニー・パッキャオ。1995年のプロデビューから20年が経とうとしている。彼の築いた時代は、いかに続き、そしていかに終わるのだろうか。
世界のボクシングファンを魅了し続けたマニー・パッキャオ(フィリピン)はもう終わってしまうのだろうか――。
アジアの英雄マニーを愛した世界中のファンが気が気ではない。4月12日、WBO世界ウェルター級タイトルマッチ、ティモシー・ブラッドリー(米)との試合は、そうした不安をさらに膨らませてしまう内容だった。
ブラッドリーとの再戦はパッキャオにとって絶対に勝たなければならない一戦「Must-win」と言われた。2012年6月にブラッドリーに議論を呼ぶ判定で敗れたパッキャオは、同年12月、ライバルのファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)に衝撃的なノックアウトでキャンバスに沈み、自身初の連敗を喫した。翌年11月に再起したものの、35歳のパッキャオの衰えを指摘する声は、徐々に信憑性を増していた。それを払しょくするのが、ブラッドリーとの再戦でマニーに課せられた使命だった。
結果は3-0の判定勝ち。勝利という結果を手にしたことで、どうにか生き残った形だが、関係者そしてファンの反応は芳しいとは言えなかった。東京のテレビ番組でゲスト解説をしたパッキャオの同胞、元4階級制覇王者のノニト・ドネアも手厳しい。
「以前と比べてスピード、パワー、スタミナがなかった。今日はそこそこよくやったと思うが、以前の姿に戻るのはもう少し時間が必要だろう。マルケス戦の影響? それは確実にある。4回にいいパンチをもらってからは引くようになり、パッキャオのパンチに威力がなくなった」
しびれるような左は、放たれることすらなかった。
パッキャオの代名詞と言えば一撃必倒の左ストレートである。小さな体を爆発させるかのように鋭く踏み込み、ライフルのような左でバッタバッタとスター選手を倒す姿にファンは酔いしれた。アジア人のパッキャオが米国でスターになれた要因でもある。
しかし、ブラッドリー戦であのしびれるような左が炸裂することはなかった。それも何度もトライした末の不発ではなく、鋭く踏み込むこと自体を躊躇するかのように、伝家の宝刀は抜かれることすらなかったのである。