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予選落ちの意味と、変わらないもの。
松山英樹とマスターズ優勝との距離。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2014/04/12 12:30
2日目には71とスコアをひとつ伸ばす健闘を見せたが、カットラインには3打及ばずメジャー初の予選落ちを喫した。マスターズ優勝への挑戦は来年以降も続いていく。
松山英樹の3度目のマスターズは悔しい予選落ちに終わった。
日本を発つとき、羽田空港で開かれた会見で「優勝を目指す」と高らかに宣言したが、決勝ラウンドに進むことすらできず、オーガスタを去る結果になった。
胸の痛みに塩を塗り込むような質問かもしれないという思いが私の脳裏によぎったが、最後に、これを尋ねずにはいられなかった。
「松山選手とマスターズ優勝の距離は、予選落ちしたことで、変わりましたか? それとも変わらない?」
松山は黙って下を向き、数秒間だけ考えた。考えた末、すっと顔を上げて、こう答えた。
「変わらないと思います」
良かった。彼の返答が「遠のいた」ではなくて、良かったと安堵した。
8オーバーの初日からの大逆転はならなかった。
初日に8オーバーの80を叩いた松山が2日目に巻き返して予選を通過するためには、リーダーボードの最上段に躍り出たババ・ワトソンやジョン・センデンらと同様の68あたりをマークする必要があった。初日の出遅れが松山の心にダメージを与えていないはずがない。そんな心の傷も背負いつつ、不調のゴルフを好調へ転じて好スコアを叩き出すのは至難の業と思われたが、松山は必死の善戦を続けていた。
1番は右のフェアウエイバンカーにつかまった。が、第2打できっちりグリーンを捉え、慎重に2パットでパー発進。2番(パー5)はティショットを大きく左の林へ曲げ、2打目以降もミスを重ねてダブルボギーを喫したが、5番、8番でバーディーを奪い返した。
後半は2つのパー5のいずれもイーグルチャンスを逃してのイージーバーディー。上がり3ホールを迎えるとき、松山の通算スコアは7オーバーになっていた。
予選を通過できるのは50位タイまでと首位から10打差以内。カットラインは4オーバーと予測されていた。松山自身も、「4オーバーぐらいだと思って、そこを目指してやっていた」。
上がり3ホールすべてでバーディーを奪えば、予選通過が叶う。16番(パー3)は8メートルを沈めて6オーバーへ。だが、17番は10メートル超のバーディーパットがカップの左を通過し、バーディーならず。
そして最終18番。左セミラフからの第2打がグリーン右のバンカーに落ちた瞬間、松山の予選落ちが決まり、彼のマスターズは2日間で幕を降ろした。