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<2014国内男子ゴルフツアー展望> 群雄割拠の戦国シーズン、賞金王の座を掴むのは?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2014/03/28 11:50
この戦国の世で天下を取るのは誰か。
松山英樹の活躍一色に染まった昨年の日本男子ツアーで、ある“事件”が起こっていた。4月にプロ転向したスーパールーキーは、年間25試合のうち破竹の勢いで4勝をマーク。残りの試合では21人の優勝者が誕生した。つまり年間複数回優勝を飾った選手が、わずか1人だけ。1973年に日本プロゴルフが現在のようなツアー制となってから史上初めての出来事だった。
'14年、松山は海を渡り米国で早くも頭角を現している。それゆえ、残された日本ツアーの新シーズンは近年稀に見る混戦の様相だ。賞金王の本命を絞り切るのは難しい。
下馬評では、総合力に秀でた小田孔明と池田勇太の名前がまず挙がる。小田は賞金シードを初めて獲得した'07年以降、賞金ランキングで最も低かったのが'08年の13位。毎年安定した成績を残し、昨年は4位でシーズンを終えた。10月の日本オープンで最終日に逆転負けを喫し、初のメジャータイトルを逃したこともあり「調子が良かった秋から1勝止まりだった悔しさがある。去年のリベンジ。賞金王を目指さないと何のためにプロになったか分からない」と息巻く。父が付けた孔明の名はもちろん三国志時代の軍師・諸葛孔明に由来。戦国ツアーの天下取りへ機は熟した。
小田と池田を追う存在はベテランの片山と谷原。
一方の池田は、現役選手会長としては史上初の賞金王の戴冠がかかる2年目のシーズンだ。大会スポンサーとの折衝をはじめ、コース外を奔走し、多忙を極める生活を継続する。練習時間を削られ、昨年は11月初旬にようやく1勝を挙げた。しかし今季は他選手の提案から、選手会組織を改革し、多岐にわたる職務を分担。「選手会が組織として成功して、いちプロゴルファーとしても成功した年にしたい」と準備万端の様子だ。
脂の乗った2人のオールラウンダーに、勝るとも劣らないゴルフの充実ぶりを見せるのが、昨季5年ぶりの勝利を挙げた片山晋呉。通算27勝の永久シード選手は「復活」という表現を嫌う。「昔よりも上手くなっている。だから新生だ」と。5度目の賞金王のタイトルを手にした'08年以降、ハートは一旦は燃え尽きた。しかし近年のスイング改造が実を結び、不惑を迎えて飛距離アップに成功。また片山との争いで一時代を築きながらも、通算10勝目を3年のブランクを経て手にした谷原秀人には、2年連続で平均パット部門1位に輝くなど新しい武器が加わっている。