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石川遼、6度目の正直で8位入賞!
ミラクルショットの陰に「四方の攻め」。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2014/03/24 11:25
パーマー招待でも、プエルトリコオープン、バルスパー選手権に続き予選を突破すると最終日も71でまとめ今季3度目のトップ10入りを果たした石川遼。昨季あれほど苦労したシード獲得はもはや手中だ。
「10回打って、10回とも池に入れない」という確信。
「ライは悪くなかった。前下がりで40ヤードぐらいスライスしたショットだった。4番アイアンだとグリーン手前しか使えない。スライスはかからないほど飛ぶわけだけど、3番アイアンなら思い切り(奥に)突っ込んでもいいし、左に行けばバンカー(に入るだけ)」
つまり、石川は前後左右すべての方向に行くケースを想定した上で「10回打って10回とも池には入らない」と確信を抱いてから打ったのだ。「気持ちの中で10回中7~8回は成功するという絶対的な自信があるときにスーパーショットは出る」
このショットは見事なスーパーショットではあったけれど、確かな技術と確信に裏付けられていたのだから、ミラクルなようでミラクルではないということだ。かつては1点だけを見つめてまっしぐらに追いかけていた石川が、今では視線を四方に向けながら、あらゆるケースを想定しつつ、プレーできるようになっている。
「'09年、'10年ごろと比べて明らかに成長できている。やってきた練習は間違ってなかった。やってきた練習に対して充実感がある」
6度目にして初のトップ10入りは、まさしく彼の成長の証だった。
大きな夢とともに、足元の現実を見つめる「心の目」。
技術の成長のみならず、石川の精神面の成長はそれ以上に著しい。かつての石川の「技術の目」が、ドライバー一辺倒でフェアウェイの先にある遠くの1点だけを見つめていたように、以前の石川は「心の目」も遠くの夢だけを見つめていた。
もちろん、大きな夢を抱き、目指すことはとりわけ若者にとっては大切なことだ。が、遠くの1点を見つめるあまり、手元足元の現実が見えなくなる現象が以前の石川には、しばしば起こっていた。
米ツアーの正式メンバーとなって本格参戦を始めた昨季序盤は「目標は優勝。予選通過を目指しているわけじゃない」と思うあまり、目前の予選通過が果たせず、腰痛の悪化も加わってシード落ちの危機に瀕した。
瀬戸際まで追い詰められて苦しんだが、下部ツアーのファイナル4戦を経てカムバックした今季の石川の目線は、遠くの目標を見据えながらも近くの現実をしっかり眺めている。