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松井秀喜から注入された宿命と覚悟。
村田修一、真の「巨人の4番」へ。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/02/18 11:20
阿部慎之助との4番争いに改めて意欲を燃やす村田修一。昨年は打率3割1分6厘、25本塁打、87打点とリーグ連覇に大きく貢献したが、日本シリーズでは楽天に競り負けた。今季への思いは強い。
「4番の心構えを聞きたい」
巨人の宮崎キャンプ。松井秀喜臨時コーチの指導を熱望していた村田修一の念願が実現したのは、第2クール初日となった2月6日の特打でのことだった。
室内練習場の木の花ドームに乾いた打球音がこだまする。
「打者・村田」対「投手・松井」。
伝統ある巨人の4番経験者同士の無言の会話は、152球にも及んだ。
村田が、「投げてもらえる機会はあまりないので光栄でした。緊張感がありました」と感謝を口にすれば、松井コーチも「そんなに投げたんだ」と充実した表情を見せた。
キャンプ初日から連日打撃投手を務めていた松井コーチが投じた152球は、この時点でキャンプ最多。無理もない。直接指導を志願していた4番に、かつての4番が打撃投手を務める。互いに熱がこもるのは当然だろう。
練習を終えて囲み取材に応じた松井コーチは、村田の打撃を高く評価していた。
松井コーチから受けた助言はシンプルなものだった。
「どのボールに対しても力強く振っていましたね。逆方向にも力強く打っていましたし、両方向に交互に打てるというのは素晴らしいですよ」
松井コーチ自身、技術指導について「打席のなかで話したりしましたけど」と多くを語らなかった。しかし、村田からすれば特別な時間であり、得たものも大きかったことは事実。
「おっしゃっていたことはシンプルなことでした」
村田は、松井コーチとのやり取りを簡潔に説明してくれた。
「低めの球を振ることはあるけど、余計なことを考えずに狙ったボールに目つけすること。しっかり球種を絞って打つことが大事だよ」
松井コーチの助言を受け、村田は「改めて基本が大事なんだ、と痛感しました」と原点に立ち返ることができたという。
技術革新の光明を見出した。だが、それ以上の収穫となったのは、村田が望んでいた「巨人の4番」というDNAを松井コーチから直々に注入されたことではないだろうか。