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「3年契約×10億円でドジャース移籍」
マー君獲得の商業的正解はこれだ!
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/01/16 10:50
人気は商業的価値を計る重要な要素。ファンの田中将大への支持は絶大だが、アメリカでも人気を博すことができるか。
最大の要素は「観客数が増える余地があるか」?
松坂投手は上限無制限の旧ポスティング制度で、入札額が高騰。さらにスポンサー集めでは、米国内の日本支社に対して営業をかけるも効果が上がらず、船井電機1社に留まってしまいます。また、もともと常に球場は満員で、松坂加入による観客数増加の余地がありませんでした。レッドソックスにとっては「大赤字」だったと言わざるを得ません。
また、初年度から年俸が高く設定された(4年48億円)福留選手に関しても、カブスは新たなスポンサーや観客の獲得には至らず、やはり経済的には「赤字」の投資だったことになります。
この論文から、私が考える重要なポイントを整理してみたいと思います。
まず、球団に最も大きな利益をもたらす可能性があるのは「観客数の増加」だということ。スポンサー収入はイチロー選手や松井選手の実績でもおよそ年間6億円でした。しかし集客による増収はそれを大きくしのぎます。野茂投手や松井選手の例でも分かる通り、1試合で数千人の伸びがあり、チケットだけでなくグッズや食事代なども含めて1人1万円の売上と考えれば、1試合あたり数千万円、シーズンを通しては数十億円の増収につながる可能性を秘めているのです(それは同時に、5試合に1試合しか登板しない先発投手より、毎試合出場する野手の方が投資効率が大きいことも意味します)。
そうなると、レッドソックスの本拠地フェンウェイパークのようにすでに満員の球場では観客が増えようがないため、座席の稼働率も重要なファクターです。さらにホームタウンの日本人人口(つまり大都市であること)も、動員のカギを握ります。
投資戦略上、契約は「3年」が一つの目安。
そして忘れてはいけないのが、契約年数です。ここまでは初年度のデータを紹介してきましたが、所属年数の経過とともに、「黒字」査定の3選手とも評価は厳しくなっていきます。頑張って良い成績を残せば残すほど年俸は上がる。逆に、ケガをしたり成績が悪くなってしまったりすればファンやスポンサーが離れていく。いずれにせよ、コストパフォーマンスの悪化は避けられず、一人の選手と長く契約し続けることは球団にとっては経済的なメリットが薄いのです。野茂フィーバーが3年で沈静化して平常の観客数に戻ったこと、スポンサーの契約期間は長くても3年程度であることなどを考えると、投資戦略上「3年」という期間が一つのポイントになると思います。