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最下位の日ハム、来季は優勝争い?
肝はドラフト下位選手の「伸び率」。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/12/18 10:30
選手との対話を欠かさない栗山英樹監督。スカウト、首脳陣と選手との距離の近さが、日本ハムの強さを支えている。
森本稀哲、武田勝、武田久らが活躍した黄金期。
現役引退後、アメリカへのコーチ留学を経て'00年にチームのフロントに入った白井一幸がこんな話をしたことがあった。
「当時のドラフトには希望枠というのがありました。こちらが本当に欲しいと思う、いい選手は人気球団かセ・リーグに行くわけですよ。欲しい選手を獲れないのだとしたら、僕らができるのは、選手を育成していくしかない。高校生を中心に選手を多くとって、育てていくしかなかった」
スカウティングのフォーマット化や将来性を見極める術を要求し、すべてのスカウトに責任を持たせる。その一方で、選手を獲るだけではこと足りず、育成環境を充実させ、後の黄金期を築く下地を作ったのだ。
'06、'07、'09年のパ・リーグ制覇の際は、ダルビッシュ有、八木智哉、田中賢介ら上位指名選手がいる一方、下位指名選手が活躍していたことも見逃せない要素だった。
1番だった森本稀哲、4番の高橋信二、控え捕手の鶴岡慎也、三塁手・小谷野栄一らである。投手陣に目を移しても、先発ローテーションを担った左腕・武田勝やセットアッパーや抑えとして活躍した武田久も、ドラフトの上位指名選手ではないのだ。
森本らは下位指名からの叩き上げで、ファームでしっかりと鍛えられて、一軍の戦力となってチーム力を押し上げた。
今季も、来季に希望を持たせる下位指名選手たちが。
しかし組織とは難しいもので、長く強いチーム力を保持して行くのは難しい。昨年日本ハムは優勝を果たしているが、その時のメンバーは、糸井嘉男や陽岱鋼、吉川光夫、中田翔らドラフト上位指名選手が多くを占めた。
つまりその歪さが、糸井と田中の移籍が重なった今季、最下位という結果に表れたのかもしれない。
とはいえ今季の戦いの中では、上位指名ではない選手たちが、来季以降に期待を抱かせる活躍を見せたのもまた事実だった。
57試合に登板11ホールドを挙げ、オールスターに出場した矢貫俊之と右サイドのワンポイントリリーバーとして33試合13ホ-ルドを挙げた河野秀数がその代表格である。
日本ハムの指名選手で目を引くのは、矢貫と河野で代表されるように、高校時代まではまったく陽の目を見なくとも、大学・社会人と育ってきた選手をしっかり見極めて獲得、入団後に戦力に仕立て上げているところだ。