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15歳の新星は練習の鬼で小心者?
宮原知子、ソチを胸に大一番に挑む。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAFLO SPORT
posted2013/12/14 08:01
村上佳菜子、今井遥よりも一世代下、15歳の宮原知子はまさに新世代の旗手。
自分ではわからなかった、ジャンプの回転不足。
しかし、すべてが順調だった宮原に初めての挫折が訪れたのは、'13年2月の世界ジュニア選手権だった。得意とする3回転ルッツ+3回転トウループを無事降り、一見するとミスがない内容。「今度こそは表彰台」と狙っていたが、実際にはショート、フリーを通じて試みた10個の3回転ジャンプのうち9個が回転不足と判定され、総合147.42点で7位となってしまった。順位もショックだが、ジャンプの回転不足は致命傷だった。
宮原のジャンプは、小柄な身体を生かしてあまり高く跳ばずにコンパクトにまとめる。いつの間にか、回転不足で降りても勢いを殺して耐えれば転ばない、という着地がクセになっていたのだ。宮原自身には失敗した感触がなく、試合後は、
「全部ジャンプをまとめられて良かった。回転不足かどうか自分では分からなかった」
と、混乱した様子だった。
綺麗にまとめるのではなく、完璧なジャンプへ。
濱田コーチも頭を悩ませた。ルールでは、回転不足かどうかのグレーゾーンは選手の努力を考慮する、ということになっており、濱田コーチの目には十分に足りる回転だと感じられていたのだ。しかしここで、採点に文句をつけていてもキリがない。
「厳しい判定だったと思います。でも誰が見ても回転が十分なジャンプを目指すしかない」
そうコーチが気持ちを入れ替えると、宮原も「もっと高さのある、シニアの選手のようなジャンプにしたい」と目標を定めた。
今年7月、アメリカへ渡りイリヤ・クーリックからジャンプの指導を受けた。クーリックは長野五輪金メダリストで、アイスショーでは36歳の今なお3回転を跳ぶパワフルなジャンパーだ。
「クーリック先生からは、とにかくジャンプを高くすることを習いました。回転をしないで、ただ高く跳びあがるだけの練習で、高く上がるタイミングを見つけるようにしました。今までは『失敗しないように』と思って、降りるときに転ばないことに集中していました。今は、跳ぶ前の方に思考回路を変えています」