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なぜ獲得直後の細貝がレンタル移籍?
レバークーゼンの強化戦略と野望。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/01/05 10:30
U-15時代から代表に選出され続けている細貝。ザック・ジャパンとして最初の正念場となるアジアカップでも最終メンバーに選出されている
レバークーゼンの移籍市場での立ち振る舞いは、予習も復習もしっかりこなす優等生のように映る。予習とは、将来性のある若い選手を見つけ、移籍金が高騰しないうちに招き入れること。復習とは、経験のある選手を、契約の切れたタイミング、つまり移籍金のかからない状態で獲得することを指す。
彼らは、やるべきことをしっかりとこなして力をつけてきた。昨季は前半戦を首位で折り返して、最終的には4位でシーズンを終えた。今季は前半戦を2位マインツと勝ち点差なしの3位で締めくくった。
製薬会社であるバイヤー社が、実質的な親会社としてレバークーゼンの経営を全面的にバックアップしている。だから、マインツやフライブルクのようにお金がないわけではない。かといって、バイエルンやヴォルフスブルクのように潤沢な資金を惜しみなく投じることが出来るわけでもない。
市場価格以上の能力を持つ選手を捜し当てるフェラーSDの嗅覚。
移籍市場で指揮をとるのがフェラーSD(スポーツディレクター)である。フェラーは、1990年イタリアW杯で優勝したドイツ代表のメンバーで、2002年の日韓W杯では監督としてドイツ代表を準優勝に導いた。2005年からレバークーゼンのSDを務めている。
3シーズン前に、当時は20歳ながら520万ユーロの移籍金を払って獲得したMFビダルは、守備的MFとしてプレーしながら今季の前半戦で8ゴール、5アシストの活躍を見せるほどの選手になり、すでにその市場価値は1400万ユーロに及ぶ。今ではバイエルンが興味を持つほどの選手になった。2シーズン前、24歳のときに移籍金なしでやってきたFWヘルメスはいきなりリーグ4位の21ゴールを挙げる活躍を見せた。あるいは、今季のマインツの躍進を支える20歳のシュールレについては、1年以上前から注目していたという。実際、1100万ユーロの移籍金と引き換えに、シュールレは来季からレバークーゼンでプレーすることが決まっている。
昨季開幕前、35歳にしてリバプールから移籍金なしでヒーピアを獲得。すでに峠を越した選手ではないかと見られていたが、昨季は『ビルト』紙や『キッカー』誌がベストイレブンに選ぶほどの活躍を見せた。そして、今季開幕前には、早い段階からのコンタクトが実り、バラックを移籍金なしでチームに加えることが出来た。
「我々はバイエルンのようにお金を使えるわけではない。広く状況を見渡さないといけないんだ」
フェラーSDは移籍市場でうまく振る舞うコツを語っている。