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タイヤの性能を、限界まで引き出す。
鈴鹿を制したベッテルの隠れた力。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAP/AFLO
posted2013/10/20 08:01
日本GPで優勝しランキング2位のアロンソに90ポイント差としたベッテル。次戦インドGPで5位以内に入ればベッテルのタイトルが確定する。
タイヤの性能劣化をものともしないベッテルの走り。
ところが、ベッテルのラップタイムを注視していた小松は、我が目を疑った。ニュータイヤで走るグロージャンとほとんど変わりないペースで、ベッテルが走り続けていたからである。
ベッテルが2度目のピットインをしたのはそれから8周後の37周目。つまり、ベッテルは23周走行したことなる。金曜日の走行データからハードの寿命は24周と予想されていたから、ほぼ限界まで使っていたことになる。にもかかわらず、その状況でもニュータイヤのグロージャンとほぼ同じペースで走ったベッテル。敗れたものの、その相手がベッテルだったことに、小松は納得するしかなかった。
「こちらにプレッシャーをかけるところでしっかりとプッシュしてきたうえで、その後も限界までプッシュし続けてきた。本当にすごいドライバーです」
ポールポジションからスタートして、2位以下に大差をつけて優勝するベッテルの勝ち方に対して、異を唱える者は少なくない。それが表彰式でのベッテルへ対するブーイングにもつながっているのだろう。しかし、それが必ずしも真実でないことは、今年の鈴鹿での勝利が物語っている。抜き所が少ない鈴鹿で3番手からの大逆転。ドライバーズ選手権4連覇が目前となった。