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<ソチ五輪で集大成を> 高橋大輔 「やるべきことを尽くしたその先に」 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byShino Seki

posted2013/10/15 06:00

<ソチ五輪で集大成を> 高橋大輔 「やるべきことを尽くしたその先に」<Number Web> photograph by Shino Seki
出場することが精一杯だったトリノ、大怪我を乗り越え
何とか銅メダルを手にしたバンクーバー――。
3度目の大舞台を控えたシーズンが幕を開けた。
スケート人生の集大成。目指すものはただひとつ。

 偽りのない表情が、真実味を感じさせた。

「こうやってスケートができていることは幸せだと思う」

 本当なら気を張りつめていておかしくないはずだ。なのに柔らかい空気を漂わせる。夏の間、土台作りにと厳しく取り組んでいた陸上トレーニングについて尋ねられれば、「陸で動くのは苦手なんです(笑)」

 ユーモア交じりに、軽妙に答える。

 そしてもうすぐ始まる、4年に一度しかないシーズンへの心境をこう表した。

「なすがまま、なるがまま」

 オリンピックシーズンにもかかわらず、達観しているかのようにも受け取れるその言葉は、昨シーズンの悔恨、出会い、そして競技人生への思いから形作られていた。

「けっこう、もう忘れているんですけれどね」

 断りつつ、高橋は昨シーズンを振り返る。

 悪くないシーズンのはずだった。

 昨年12月のグランプリファイナルでは、7度目の出場で初めて優勝。日本男子としても史上初の快挙であった。年末の日本選手権は総合2位だったものの、フリーでは競技人生で何度あるかという圧巻の演技であらためてスケーターとしての凄みを実感させた。

 暗転したのは終盤にさしかかってからだった。年明け2月の四大陸選手権で7位にとどまると、翌月の世界選手権では6位と、ここ6シーズンで最も悪い成績に終わる。

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