フットボール“新語録”BACK NUMBER
川崎Fの元トレーナー・西本直が教える
1対1のぶつかり合いに強くなる方法。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byShinya Kizaki
posted2013/09/20 10:30
川崎フロンターレのトレーニングコーチを辞し、広島で体のケア・トレーニング指導を行なう『Conditioning Studio 操』をオープンさせた西本直。
大久保が身につけた“井げたの動き”。
大久保は元々動物的な動きを体に秘めており、西本が求める“井げたの動き”を瞬く間にものにしてしまった(最初に井げた理論を提唱したのは、古武術家の甲野善紀。西本も体と動きを突き詰め、そこに行き着いた)。それを身につけると、上半身と下半身が連動していながら、こんにゃくをひねるかのように別のモーションを行なうことができる。言い換えると、「肩甲骨と股関節を別の方向に動かせる」ということ。これについては今シーズン後にまたきちんと取り上げたい。
西本は約4カ月間の休養を経て体調も回復し、9月9日、広島港宇品の旅客ターミナルの2階に『Conditioning Studio 操』をオープンさせた。これからは「操体法」をベースにした体のケアと、個別のトレーニング指導に取り組んでいく。オープン時には風間監督、サンフレッチェ広島の森保一監督、広島カープの佐々岡真司・元投手からお祝いの花が届いた。
では、その“動きのプロ”から見ると、日本人選手のぶつかり合いのどこに問題があるのか。
すでに冒頭に触れたように、鍵は「屈筋」と「伸筋」の使い方にある。
「屈筋」とは、腕や脚を曲げるときに使う筋肉で、鍛えると筋繊維が肥大化しやすい。一方、「伸筋」は腕や脚を伸ばすときに使う筋肉で、鍛えても筋繊維は肥大化しづらい。
外から押される力に対抗するには、伸筋が効果的。
どうしても体を鍛えるとなると、見た目の変化を感じられることもあって、一般的に日本人は屈筋の強化に力を入れてしまう傾向がある。力こぶを大きくする感じだ。
しかし、西本によれば、ぶつかって来た相手に対抗するときに、力こぶにぎゅっと力を入れて、屈筋を使うのは得策ではない。屈筋は内側に曲げるベクトルを作っており、外から押されるベクトルと同じ向きのため、入れている力ほどの効果がないのだ。
それに対して、伸筋は外に向かうベクトルを作り出し、外から押される力に反発する。はるかに効果的だ。
また、人間は立っているときに無意識に背筋を伸ばす筋肉を使っていることからわかるように、伸筋は屈筋に比べて疲れづらい。伸筋には本人が自覚する以上のパワーがある。
西本のスタジオを訪れると、この単純な原理を体感させてくれた。まず西本の指示通り、腕に力こぶを作って、横から押してもらう。次に腕をスッと伸ばして(西本いわくバスケットボールをドリブルするような感じで、手の指まで広げて伸ばす)、また横から押してもらう。
誰か協力者を見つけて、実践してみてほしい。腕を伸ばした方が、外からの力に対して強いことを感じられるはずだ。