スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
上原浩治、34人連続アウトの新記録!
鍵は配球を支えるある球種と“ゴロ”。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAP/AFLO
posted2013/09/13 10:30
チームの絶対的信頼を背負って9回のマウンドに立ち続ける上原浩治。アメリカで投手の評価によく使われるWHIP(1回あたり何人の走者を出すか)は現在0.57と、MLB史上でも屈指の数字を叩き出している。
3年前は3分の2がストレート、今は……。
上原がブルペンに転向したのはオリオールズ時代の2010年のことである。現在はその3年前と比べると、配球がまったく違っているのだ。
ストレート | カット系 | カーブ | スプリット | |
2010 | 66.30% | 5.60% | 0.10% | 16.30% |
2013 | 46.70% | 5.90% | 0.30% | 47.10% |
3年前は投球のおよそ3分の2がストレートだった。しかしいまでは、最も多投しているのがスプリットなのである。
そして「打者の目先を変えるため」にカット系(上原本人はカットファストボールとは呼ばない。常に『カット系』)と、わずかではあるがカーブを織り交ぜている。
3年の歳月の間に、スプリットのコントロールが格段に良くなり、ストライクが先行することが強みになっている。11日の試合でも、ボール球に手を出すレイズの打者が目立った。
コントロールもさることながら、スプリットの軌道が打者の打ち気を誘い、そこからボールゾーンへ球が逃げていく。見ていて惚れ惚れする投球だ。
それにともなって、バッターの「打球の質」も変わってきたのも注目点である。
もともと上原は自分のことを、フライの多い
「フライボール・ピッチャーですよ」
と語っていたのだが、今季はゴロアウトが多くなってきた。打球における割合を、3年前の数字と比較してみよう。
アメリカで評価される「ゴロを打たせるピッチング」。
●2010年
ゴロ23.6% フライ58.2%
●2013年
ゴロ40.5% フライ49.6%
ゴロの割合が格段に増えている。
アメリカではフライボール・ピッチャーよりも、「グラウンドボール・ピッチャー」の方が好まれる。それはそうだ。フライは本塁打につながる確率が高いし、ゴロが多ければダブルプレーの可能性も高まる。
上原はスプリットを磨くことで、安心、確実なクローザーの評価を得たのである。38歳にして、まだまだ「進化」を続けているのだ。
上原のチャレンジは10月も続く。
いよいよポストシーズンは目前、上原がレッドソックス・ファンから背負う期待は限りなく大きい。