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上原浩治、34人連続アウトの新記録!
鍵は配球を支えるある球種と“ゴロ”。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAP/AFLO
posted2013/09/13 10:30
チームの絶対的信頼を背負って9回のマウンドに立ち続ける上原浩治。アメリカで投手の評価によく使われるWHIP(1回あたり何人の走者を出すか)は現在0.57と、MLB史上でも屈指の数字を叩き出している。
レッドソックスの上原浩治の快投が続いている。
9月11日のレイズ戦の9回、3対3の同点の場面で登板し、三振、三振、セカンドゴロと3人をたちまち打ち取った。
これで34人連続アウト。レッドソックスの球団記録の達成である。
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試合はレッドソックスが10回にマイク・カープの満塁弾で7対3とレイズを突き放し、上原が勝ち投手となった。
それにしても34人連続アウトとなると、11回と3分の1を抑えたことになる。単純に考えれば完全試合を達成してなおかつ、パーフェクトが継続中という、とんでもない記録だ。
7月5日の「スポーツ・インテリジェンス原論」では、上原がクローザーに昇格したレッドソックスのブルペン事情について書いたが、守護神の不在に悩んでいた球団にとって、上原のパフォーマンスはうれしい誤算だっただろう。
もはや上原は安定度ではメジャー・ナンバーワンのクローザーと言っていい。
しかし、異色のクローザーであることもまたたしかなのである。
90マイルに届かないストレート。
異色のワケは、ストレートの「遅さ」にある。
「僕の真っ直ぐは、めっちゃ遅いですから」と本人も認めるほどだが、メジャーリーグのクローザーといえば、レッズのチャップマンに代表されるように100マイルを超える投手が好まれる。
基本的にプロスポーツとは「マッチョ」な世界だから、球が速いこと、打者であれば遠くに飛ばすことに「信仰」がある。
ところが上原の今季のストレートの平均球速は、89.3マイルで90マイルにさえ満たない。140キロを超える程度である。
強打者がひしめくメジャーの世界で、この球速でも抑えられる秘密はなにか?
その答えは、
「スプリット」
にある。