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168cmの体、130kmの直球で完封劇。
“小さな巨人”樟南・山下の投球術。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2013/08/13 08:02

168cmの体、130kmの直球で完封劇。“小さな巨人”樟南・山下の投球術。<Number Web> photograph by Kyodo News

9回1死満塁のピンチでも堂々と内角ストレートを投げ続け、見事三ゴロ併殺に打ちとった樟南の先発・山下敦大。

 その身長差は「20センチ」。

 大会5日目第2試合で完封勝利を挙げた樟南(鹿児島)のエース・山下敦大は、同じ12日の第1試合で完封している前橋育英(群馬)・高橋光成と全く真逆のタイプの投手だ。

 左腕の山下が最速134キロ、常時130キロのストレートとスライダー、スクリュー、スローカーブをコーナーに投げ込んでいく投手なのに対し、右腕の高橋は身長188センチから投げおろす145キロのストレートを武器に、スライダー、フォークとスケールの大きなピッチングスタイルを誇る。

 しかし、この2人が1-0という同じスコアで完封勝利を挙げるというのだから、高校野球は面白い。

「バックを信じて、打たせて取る自分のピッチングが最後までできたと思う」

 1回戦・佐世保実(長崎)戦の後、山下はそういって微笑んだ。

 山下の特徴は、その緩急自在なピッチングだ。

 ストレートは常時130キロ程度なのだが、その生かし方が素晴らしく、打者を手玉に取る。

 中学時代から山下とバッテリーを組む捕手・緒方壮助はいう。

「今はスクリューも投げていますけど、カーブは中学時代のころからよく投げていました。(山下は)ストレートが130キロ台なので、そのストレートを速く見せるためのカーブが必要なんです。今日は、いつもよりカーブが多くはありませんが、あいつの原点の球みたいなものですね」

ピッチャーがカーブを投げることで得られる3つの利点。

 カーブにはピッチングを作っていく上でいくつか大きな効果がある。

 そのうちのひとつが、緩急をつけることによってストレートを速く見せられるということ。

 この日、山下が投げたカーブは100キロ台で、90キロ台を計測することもしばしばあった。ストレートとの速度差で考えれば40キロもあるのだ。

 前橋育英の高橋のストレートが145キロで、決め球のフォークが132キロ。山下には140キロのストレートはないが、打者にとっては高橋と変わらぬストレートに感じられたことだろう。

【次ページ】 「むしろカーブを狙いにいった方が良かった」

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