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ドジャースの逆襲と記録の中断。
~敵地15連勝の“価値”~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byYukihito Taguchi
posted2013/08/11 08:02
ドジャースの逆襲を牽引するエースのカーショー。今季はここまで24試合に登板し、防御率は1.91と抜群の安定感を誇る(8月7日現在)。
今季のドジャースは、ペナント争いに残る。
では、2013年のドジャースは、どちらのケースに属するのだろうか。ポストシーズンに進出して、ナ・リーグの覇権を争うのだろうか。それとも、序盤戦の不振が祟って、最後に苦汁を嘗めさせられるのだろうか。
結論からいうと、今季のドジャースはペナント争いに残ると思う。5月29日、ドジャースが22勝28敗の不振でナ・リーグ西地区の最下位にあえいでいたとき、(自慢するわけではないが)私は彼らの逆襲を予想した(第110回「2強の低迷とLAの嘆き」を参照)。
ただ、不振は6月に入ってもつづいた。6月21日までの成績は、依然として30勝42敗。ところがこのあと、8月5日までの1カ月半で彼らは32勝7敗の荒稼ぎを見せ、一躍、ナ・リーグ西地区の首位に躍り出たのだ(敵地15連勝がスタートしたのは7月7日のことだった)。
ドジャースの躍進を支える、多くのプラス要素。
原動力はいくつかある。強力右腕ザック・グリンキーの故障が癒えたこと。天才ハンリー・ラミレスが2年間の眠りから覚めて力強く復活したこと。彗星のように現れた新人ヤシエル・プイグが破天荒な活躍を見せたこと。若手の成長株ケンリー・ジャンセンがブルペンを支え、中継ぎと抑えの両方でフル回転したこと。
これだけプラスの要素がそろえば、マット・ケンプやアンドレ・イーシアといった主軸打者の不振も十分にカバーできる。エースのカーショーは大リーグでただひとり防御率1点台を維持しているし、新人の柳賢振も先発3本柱の一角を着実に担えるようになった。ラミレスが度重なる故障で離脱したのは痛いが、エイドリアン・ゴンザレスやカール・クロフォードといった実力者の調子が上がれば補填は利くはずだ。
ジャイアンツ、ナショナルズ、レッズ……開幕前に期待されていた有力チームがいまひとつぱっとしない現在、ドジャースの逆襲は、ブレーヴスの好調維持と並んでナ・リーグの希望だ。ポストシーズンの行方を占うのはまだ早いが、ドジャースの存在から眼が離せなくなったのは事実だと思う。