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400戦無敗の男、
自身の半生を明かす。
~ヒクソン・自伝刊行インタビュー~
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byTamon Matsuzono
posted2010/10/26 06:00
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「“草食系男子”というライフスタイルには問題がある」
「与えられた環境の中で一番居心地のいい状況を作っていく。自分の置かれた状況を把握しつつ、考え方さえ変えたら、必ず幸せな人生を送ることができる」
ヒクソン流・幸せな人生の掴み方は独特だ。彼は幸せはいつか自然にやってくるものという通説を否定する。
「自分から何も行動を起こさなかったら、幸せにはなれない。日本には草食系男子というタイプが増えていると聞きました。草食自体は問題はない。ただ、そういうライフスタイルには問題がある。草食系という発想からは自分から何かを勝ち取るという行動には結びつきにくい」 だったら、日本でのバーリ・トゥードで勝つたびに何かを勝ち取ってきたのだろうか? ヒクソンは首を左右に振った。
「私の場合、グレイシー一族という柔術一家で生まれた事情もあったので、試合はこなしていくものだった。勝つことによって得られる幸せはほんの一瞬。たぶん、私は試合後、ガッツポーズをしたことがない。日本の侍が戦の中で誰かを斬っても、たぶん喜ばないでしょう。それと同じ。侍は斬ったら、また次の戦をしなければならない。そういう意味で私も思い出に残っている試合はありません。闘った試合は全て記憶していますけどね」
ラストマッチから10年、鋭い眼光は変わっていないが、筋肉は5キロほど減った。11月21日、ヒクソンは51歳になる。
ヒクソン・グレイシー
1959年11月21日ブラジル生まれ。グレイシー柔術最強の使い手として「400戦無敗の男」と称される。2008年に全日本柔術連盟(JJFJ)を設立。初代会長に就任した。