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沈着な長髪投手としたたかなGM。
~SFジャイアンツの大いなる魅力~ 

text by

芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byGetty Images

posted2010/10/23 08:00

沈着な長髪投手としたたかなGM。~SFジャイアンツの大いなる魅力~<Number Web> photograph by Getty Images

10月16日、ハラデイに投げ勝ったリンスカム。今季は16勝を挙げ、3年連続奪三振王に輝いた

スター不在もいぶし銀の実力者を集めたGMの功績は大。

 リンスカムを除くと、ジャイアンツに大スターはいない。M・ケイン、J・サンチェスの投手陣や2年目捕手のB・ポージーは楽しみな存在だが、今季のジャイアンツには戦力をやりくりしながら勝ち進んできた印象が強い。

 最大の功労者はGMのブライアン・セイビーンではないか。セイビーンの功績は、修正が早かったことだ。B・ジート、A・ローワンド、E・レンテリーアといった高額補強組の働きが悪いと見るや、彼はすぐさま次の手を打った。P・バール、J・ロペス、C・ロスといった「切り捨てるにはまだ早い中堅選手」をつぎつぎと獲得し、シーズン後半戦を51勝30敗のハイペース(全30球団中フィリーズに次ぐ高率)で乗り切ったのだ。ロスやロペスがプレーオフで見せたいぶし銀の活躍は、みなさん先刻ご承知だろう。

2010年を締め括るのは「脇役」のジャイアンツか?

 とまあそんなわけで、2010年版の「投手の年」は、ちょっと面白いひねりを入れる形で大団円を迎えようとしている。

 果たして後世、今季のポストシーズンはどのように記憶されるのだろうか。J・パーマー、T・シーヴァー、C・ハンターといった殿堂入りの投手を輩出した1973年に匹敵する年として語り伝えられるのか。それともまた、O・ハーシュハイザー、B・セイバーヘイゲン、D・スティーブといった渋めの好投手が活躍した1985年の相似形として述べられるのか。興趣は尽きぬが、私の頭のなかには「脇役だったジャイアンツがいつの間にか主役に躍り出た年」というフレーズが浮かんでいる。

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サンフランシスコ・ジャイアンツ
ティム・リンスカム

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