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日本一恐ろしい「神宮のヤジ」が、
混戦セ・リーグのカギを握るって……。 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/09/01 12:50

日本一恐ろしい「神宮のヤジ」が、混戦セ・リーグのカギを握るって……。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

神宮のヤジで心を狂わされてしまった男たち……。

 記憶に新しいところでは2年前の10月、巨人とデッドヒートを繰り広げていた当時阪神の岡田監督が投手起用を野次られて「コラ、誰に向かって言うとんのや!」と詰め寄った。今年の5月には横浜の主砲・村田が心ない野次に激昂しフェンス越しに怒声を放っているし、7月には3連敗を喫した広島・野村監督が罵声と共に飲み物をかけられそうになっている。そういえば、'05年4月にサヨナラ負けを喰らった横浜・佐々木主浩が目の前でビールをかけられた時には、こんな形で'98年以来のビール掛けになろうとは、と我が目を疑ったものである。

 これらの行為は一部の過激なファンのものであることはわかっている。今年、最もあの道での被害にあったと予想される辞任直前のヤクルト・高田監督にだって、大人しいヤクルトファンとは思えないほど手厳しい声が聞こえてきた一方で、「最後まで続けるつもりで頑張れ!」という悲痛な声も何度となく聞いた。

 厳しい言葉も、激励の言葉も、同じ愛であることは間違いない。しかし、人間の耳は思い当たる節がある時ほど悪いことばかりをよく拾う。いいところなく負けた日なんざ、声援も勝手に野次に変換してしまうこともあるやもしれない。応援したのに嫌な顔をされたなんて話もよく聞く。

ヤクルトの成績にはスタンドのヤジが大きく影響している!?

 前出の中継ぎピッチャーは言う。

「神宮のあの道は負けたら厳しい道ですが、結局チームが勝って活躍すればいいんですよ。そうすればあの道はどこよりも気持ちがいい場所ですからね」

 冒頭に書いたヤクルト×阪神の神宮3連戦は、その後の2試合を阪神が大勝で飾り、試合後の公開処刑ロードは一夜にして勝者を称える凱旋ロードとなった。

 首位に返り咲き、2戦連続20安打越えと打線に勢いが戻った阪神、そして今季連勝と連敗を重ねてきたヤクルトを見ていると、チームの勢いに神宮の“あの道”の声援が無縁ではないような気がしてならない。

 ペナントレースも残り30試合を切った現在、セ・リーグ4強の残された開催試合は東京ドームが8、ナゴヤドームが12、甲子園が13、そして最も多いのが14試合を残す神宮球場だ。

 そのスタンドからの声は確実に選手に届いている。あるいはペナントのカギを握るやもしれぬ神宮での戦い。選手もファンもあの道でのコミュニケーションを上手く活かしてもらいたいものである。

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