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ロゴタイプが見せるさらなる充実――。
ダービー馬の栄冠は“孝行息子”に!?
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byAFLO
posted2013/05/24 10:30
皐月賞をレコードで制したロゴタイプ。ダービーでは、鞍上がミルコ・デムーロから弟のクリスチャン・デムーロに乗り代わり、史上初となるダービー兄弟制覇を狙う。
今年の3歳GI戦線は、「不遇をかこつマイナー種牡馬の産駒が親孝行」がトレンドとなっている。
記憶に新しい先週のオークスの勝ち馬、メイショウマンボ(牝3歳、栗東・飯田明弘厩舎)の父は、'05年の天皇賞(春)を制したスズカマンボ(12歳、父サンデーサイレンス)。
種牡馬デビューの'07年には96頭の種付け頭数が集まったものの、待っても待っても活躍馬が出現しないことから、徐々にその数を減らして昨年は自己最少の34頭。いわゆるジリ貧の状態に陥っていた。そこにメイショウマンボという孝行娘が舞い下りて、父の存在感に厚みが蘇ったというわけである。
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クラシックホースを1頭輩出したからといってすぐに種付け料(今年は70万円。現在の日本最高はディープインパクトの1500万円!)が上がるというわけではないにしても、訪れる繁殖牝馬の数と質は確実に上がる。喜びに沸く人々はメイショウマンボの馬主とその関係者という枠だけでは収まらないのが、競馬というスケールの大きいホビーの本質なのだ。
ちなみにメイショウマンボを担当している塩見調教助手は、スズカマンボの生産牧場、北海道・新ひだか町静内のグランド牧場で修行時代を過ごした人。「これもなにかの縁、とメイショウマンボを担当させてもらいました。初めての重賞勝ち(フィリーズレビュー、GII)だけでも大感激だったのに、クラシックまで勝てるなんて夢のようです」と、人と馬の縁のつながりの不思議さを、若き日の苦労さえも余韻としてシミジミと味わっていた。
不遇な種牡馬スズカフェニックスに現れた孝行息子。
NHKマイルCを勝ったマイネルホウオウ(牡3歳、美浦・畠山吉宏厩舎)は、スズカフェニックス(11歳、父サンデーサイレンス)がその父。
この3歳世代が初産駒、つまりピカピカのルーキー種牡馬だ。デビューしたばかりで不遇と言うのはおかしいと思うかもしれないが、種付け頭数はデビュー年の59頭からいきなりの下降線をたどっており、昨年は僅かに25頭。サンデーサイレンスの血は明白な過当競争の渦中にあり、'07年の高松宮記念だけの勲章では種付け料を安くしたとしても顧客が集まりにくい。
それにしても、結果が出る前に不人気というのは、関係者としては大いに不満に違いない。そこへ出現したGIホースという孝行息子だ。もし今週のダービーも勝ってしまおうものなら、スズカフェニックスの永井啓弍オーナー(前出のスズカマンボも同じく同氏の持ち馬)は大祝賀会を催してしまうに違いない。
そして、皐月賞馬ロゴタイプ(牡3歳、美浦・田中剛厩舎)も、恵まれない種牡馬の家から出た孝行息子だ。