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本田圭佑はCLのために残留すべき!?
CSKA、ロシアリーグ優勝までの軌跡。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2013/05/20 11:30
優勝を決めた直後のCSKAのイレブンたち。若い選手が多いチームで、来季以降のさらなる躍進が楽しみなチームとなった。
チームが復活を遂げたふたつの理由とは?
復調の要因はふたつに集約できる。
ひとつ目は新たな得点源の台頭だ。
ドゥンビアの戦線離脱に直面したスルツキは、チャンスメーカーのアーメド・ムサを4-2-3-1の1トップに抜てきする。システムと個性のミスマッチも囁かれたが、ナイジェリア代表の新鋭は爆発的なスピードを得点へ結びつけていくのだ。
2列目の手厚いサポートも、ムサの進化を促した。ここで存在感を示したのが本田だ。
ムサだけでなくロシア代表MFザゴエフとも頻繁にコミュニケーションをはかり、彼ら年下のチームメイトを鼓舞していった。前半終了時や後半開始前に彼らに声をかける本田の姿が、何度となく見かけられた。
ふたつ目は補強の成功である。
ブラジル人のマリオ・フェルナンデスは、右サイドバックのレギュラーとしてチームで4番目に長い出場時間を記録した。レアル・マドリー、バルセロナ、インテルらも関心を寄せたという才能は、1500万ユーロの投資にふさわしいプレーを、ピッチ上で表現した。
ケガの本田に代わり、獅子奮迅の活躍をしたバグネル・ラブ。
開幕直後に加入したセントラルMFのラスムス・エルムは、スウェーデン代表の僚友ウェルンブロームと4-2-3-1の「2」を担った。
エルムが攻撃に、ウェルンブロームが守備に軸足を置く役割分担は、攻撃に奥行きと幅広さ、最終ラインに安定感を生み出し、マリオ・フェルナンデスの攻撃力を引き立てた。
冬の移籍市場では、バグネル・ラブの呼び戻しに成功する。通算3度目のCSKA入りとなるこのブラジル人は、ウインターブレイク明けのリーグで獅子奮迅の働きを見せる。ケガの本田に代わってトップ下を務め、出場9試合で5得点4アシストの記録を残した。
2列目にはセルビア代表ゾラン・トシッチやラトビア代表アレクサンドロス・カウナらも控えるが、彼らと本田には明らかな実力差がある。CSKAにおいて背番号7の日本人に比肩するのは、バグネル・ラブただひとりだ。もし彼の復帰が実現しなかったら、ゼニトの巻き返しを許していたかもしれない。