ネット裏甲子園BACK NUMBER
“第92回熱闘裏甲子園”が開幕!
ネット裏の住人・8号門クラブを追う。
text by
芦部聡Satoshi Ashibe
photograph bySatoshi Ashibe
posted2010/08/10 06:00
智弁の敗退は想定内!? スカウト顔負けの情報収集力。
大会初日が終わり、観客が家路につくさなか、工藤さんたち8号門クラブの面々は早々と携帯用の椅子を並べて、夜を明かす準備をはじめていた。一日中炎天下で観戦していたせいで、もともと日焼けしていた顔が、さらに色濃くなっている。
「よく心配されますが、体調はなんの問題もないですよ。今日は午後からは風があったから比較的ラクだったしね。毎回3日目ぐらいまではなかなか寝付けなかったりするけど、ウォームアップが終われば絶好調になるから(笑)」
甲子園には魔物が住むなどといわれる。さっそく大会初日から甲子園最多となる59勝を挙げている名将・高嶋監督率いる強豪校の智弁和歌山が、千葉代表・成田に敗れる“波乱”があった。だが、工藤さんは「あの試合は番狂わせなどではない」と一蹴する。
「和歌山大会の3回戦を延長で辛勝したりと、強さを感じられる勝ち方をしてこなかった。地方予選を見ていた仲間から、“今年のチーム状態は良くない”という情報を聞いていたので、智弁和歌山の1回戦敗退はわれわれのあいだでは想定内でした」
8号門クラブの各メンバーが地元校の練習試合や地方予選に足を運び、情報を報告し合うのだという。プロのスカウト顔負けの情報収集力を誇る工藤さんに優勝校の予想を尋ねると、とたんに言葉が鈍る。
ネット裏で繰り広げられる8号門クラブの「熱闘裏甲子園」。
「もちろん注目してる選手や学校はありますよ。興南の島袋や東海大相模の一二三はどう成長してるか? 中京大中京の連覇はあるのか? それは気になるけど、勝敗は二の次。打ち込まれてるピッチャーには『がんばれ!』と励まして、負けたチームの選手には『また甲子園に帰ってこいよ!』と声を掛ける。彼らにはそういった声を届けたいし、一生懸命にプレーしてる選手たちを、一生懸命応援したい。だからネット裏で観戦してるんです」
「また会えてありがとう 第92回熱闘裏甲子園」のロゴがはいったオリジナルのポロシャツ(非売品)を着て、工藤さんはネット裏から熱い声援を送り続ける。そのひたむきさは出場する選手にも負けない。
「第100回大会まではなんとか全試合観戦したいと思ってるんだけどねえ(笑)。体力が続くあいだはがんばりますよ!」
照り付ける日差しにも負けず、ネット越しに檄を飛ばす“監督”以下、8号門クラブの夏もはじまったばかり。見巧者である彼らの視線を通した、もうひとつの甲子園をNumber Webは勝手に応援していきます!