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バルサ、バイエルンに0-4で完敗……。
露呈した“メッシ・システム”の限界。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/04/24 12:15
メッシは90分間フル出場したが、コンディションの悪さは否めず、バイエルンのゴールを脅かすことはできなかった。
後半になっても変わらないバイエルンの運動量。
スコアが2-0となると、バイエルンはさらに勢いに乗り、バルサは意気消沈する。ロッベンは右サイドから中央へ、するすると楽しむようにドリブルで仕掛けて決定機を作っていく。ドリブルにキレがなく、ボールを持ってもすぐに複数の相手に囲まれたメッシとの差は明らかだった。
2-0とリードした段階で前線を1人減らし、中盤にルイス・グスタボを入れて守備をさらに強化するという、ハインケスの明確な采配も光った。
バルサを上回るほどのワンタッチでのパスワークも目立ったが、それよりも評価すべきはバイエルンの運動量が後半になってもほとんど変わらなかったことだ。
常に攻撃の姿勢を保ちながら、守備においてもこのレベルのインテンシティを貫くことのできるチームは、現在の欧州ではバイエルンくらいだろう。左サイドのアラバの突破から生まれた4点目は、走り続けることのできる現チームの強さを表している。
いくつかのメディアは、ファウルやオフサイドなどがあったとしてバイエルンの4点中3点は無効だとレフェリングを批判しているが、バルサの選手もエリア内でハンドをした場面があった。確かにレフェリングは不安定だったが、それは結果を変えるほどのものではない。そんな判定を抜きにしても、バイエルンの完勝だったと言っていい。
守備に走れないメッシの空けるスペースが致命的に。
個々のコンディションの良さは特筆すべきで、選手たちは課されたタスクをしっかりとこなし、かつ攻撃面であらゆる形で決定機を作った。何よりも上昇気流に乗っている勢いを、バイエルンからは感じることができた。2013年に入り、緩やかな下降が続くバルサとは対照的でもある。この成長曲線の傾斜角の差は、4点という差を生むことになった。
さてバルサである。敗因はひとつではないが、この大一番で目立ったのは、ビラノバ監督の采配ミスだ。
ほとんど動けなかったメッシを90分間フル出場させ、明らかに機能していないにもかかわらず選手交代もシステム変更もできなかったのは、現在のバルサと指揮官の限界を感じさせた。
ビラノバはPSG(パリサンジェルマン)との準々決勝2ndレグでも見せた、メッシが与える影響力の大きさと一瞬のひらめきに期待したが、コンディションが万全ではない彼はプレスをかけられない。いくらその隣でペドロ・ロドリゲスとアレクシス・サンチェスが守備に走れど、メッシが空けるスペースは致命的となった。
高い位置からの守備ができなければ、このメッシ・システムは機能しない。さらに攻撃面でもまったくキレはなく、低い位置での無難なパスやボールロストを繰り返すだけだった。