フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
三者三様の才能と個性が輝いた!
世界フィギュア女子に見た醍醐味。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2013/03/19 13:15
自らの演技に十分な手応えを感じた浅田は、大会終了直後に、ソチ五輪が控える来季の振り付けを今季同様ローリー・ニコル氏とタチアナ・タラソワ氏に依頼することを発表した。
フィギュアの本質を問う、コストナーの演技と言葉。
この大会でもっとも心に残ったのは、カロリナ・コストナーの演技と言葉だった。SPでは3+3トウループの最後で転倒したにもかかわらず、3ルッツ+3トウループを成功させたキムとの点差はわずか3.11。もしコストナーが完璧に滑っていたなら、おそらくジャッジは彼女を1位にしたのではないかと思う。
だがフリーでは、コストナーは演技直前に鼻血を出すというハプニングに見舞われた。懸命に鼻の根元を押さえて苦笑いしながらも、スタートした「ボレロ」はモダンバレエの舞台を見ているような美しいプログラムだった。これをノーミスで滑りきったら、フィギュアスケート史上に残る作品になるのではないか、とすら思わせた。スピンのときに鼻を片手で抑えていたのも、まるで振付の一部に見えるほどエレガントだった。だが演技の内容は彼女のベストとは程遠く、特に終了直前の3サルコウの転倒は響いた。
結果はフリー3位、総合2位。11回目の世界選手権、5個目のメダルだった。
「この11年間、フィギュアスケートとは何かということを私なりに考えてきました。私は口下手なので、言葉で自分をうまく表現できない。でも完ぺきではないけれど、これが私なのです、と氷の上なら自分を表現できる。フィギュアスケートはジャンプだけではなくて、一つの芸術の形だと思います」
コストナーが会見でそう言った言葉は、彼女のスケートに対する姿勢そのものを表現していた。
異なるスタイルの一流選手が競い合ってこそ、フィギュアは面白い!
ひたすら純粋に、ひたむきに自分の向上を目指して進み続けるピュアな浅田真央。
圧巻の運動能力と意志の強さを感じさせるキム・ヨナ。
そして、氷の上の芸術家であるカロリナ・コストナー。
誰もがその個性を、氷の上で表現している。こうしたさまざまな違ったタイプの一流選手が揃ってこそ、フィギュアスケートは面白い。今回ロンドンでは女子シングルがもっとも面白い試合展開だった。
さらに言うとSP3位、総合4位だった村上佳菜子の成長ぶりも、とても印象的だった。特にSPの完璧なまでの美しさは、彼女のこれまでの演技の中で、最高だったのではないだろうか。
11カ月後のソチ五輪では、これらの色とりどりの花たちがたった1個の金メダルを求めて激しく競うことになる。誰がどのような咲き誇り方を見せるのか、今から楽しみである。