フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
三者三様の才能と個性が輝いた!
世界フィギュア女子に見た醍醐味。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2013/03/19 13:15
自らの演技に十分な手応えを感じた浅田は、大会終了直後に、ソチ五輪が控える来季の振り付けを今季同様ローリー・ニコル氏とタチアナ・タラソワ氏に依頼することを発表した。
3年前と変わらぬ演技。圧巻の強さを見せたキム・ヨナ。
優勝したのは、2年ぶりに世界選手権に戻ってきたキム・ヨナだった。久しぶりに見るキムは、びっくりするほど強かった。
バンクーバー五輪で金を獲得した3年前と少しも変わっていない、スピードのある3ルッツ+3トウループ。他の女子たちは、もっと難易度の低いトウループの3+3ですら四苦八苦しているというのに、なぜ彼女だけあれほど軽々と跳ぶのだろう。フリーでは、合計6回の3回転ジャンプを成功させた。まったく危なげのない、失敗しそうにない演技だった。SPではまだ様子を見ながら点をつけていたように見えるジャッジも、フリーでは気前よくGOEの加点をつけ、2位に20点以上の点差をつけた圧勝だった。
「スケートを愛しているから戻ってきた」
「バンクーバー五輪で金を取って目標が達成できてから、しばらく心が空っぽになった思いだった。もう一度五輪に挑戦すると決めたのは、スケートを愛しているから。もう一回目標は達成しているので、勝たなくてはならないというプレッシャーはない。ただスケートを楽しみたいと思ってこの試合に挑みました」
キム・ヨナは、会見でそう語った。心なしか以前よりも角が取れて、大人の女性の表情になっている。
「五輪というのは、特別な体験。五輪枠を取って、韓国の若手の選手も一緒に連れて行ってあげたいと思っています」
そう言って、若手の育成も心にかけていることを口にしたのは、2018年平昌五輪のことを考えてのことだろう。
12月に彼女が復帰したNRW杯の映像では、まだまだフリーは試合に向けての調整ができていないように見えた。だがこの世界選手権では、ジャンプは驚くほど安定して無駄な力が入らず、SPでフリップに不正エッジの判定が出た以外ほぼ完璧だった。スポーツ選手として、久しぶりの大舞台でここまでの調整をしてきたのは見事だったとしか言いようがない。
点差について聞かれると、「多くの試合に出てきたけれど、その試合によってジャッジも違えば私たちの演技の内容も違うし、出る点数も違う。今日の点数が必ずしも今後の参考にはなりません」と、大人らしい対応をした。
ただあえて言うならば、SP、フリーともにジャンプに集中しているように見え、プログラム全体の印象が心に残らなかった。「強い」ということ以外のキム・ヨナという人となりが、氷の上の演技を通して伝わってこなかった、と言ったらいいのだろうか。