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プロ7年目の洗練が落とし穴――。
田中将大はWBC球になぜ苦しむ?
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中村計Kei Nakamura
photograph byGetty Images
posted2013/02/28 11:25
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豪州戦の試合前は「無失点で抑えたい」と語っていた田中。「回が進むにつれて自分なりの手応えも感じたが……」と試合後のコメントも歯切れが悪く。
年々フォームがなめらかになり、打ちやすくなった田中。
前回のWBCでも出番こそ少なかったものの、準決勝のアメリカ戦では7回から3番手としてマウンドに上がり無失点に抑えた。2三振を奪うなど、出番が少ないのがもったいないほどの力投だった。
だから、田中にボールの違いなど関係ないのだと思っていた。
だが、栗山はこんな気になることも話していた。
「年々、フォームがなめらかに、スムーズになってきた。でも、こっちとしては、そっちの方がタイミングは取りやすいんですよ。コントロールも安定してますし。ルーキーのときはもっと荒々しかったですからね」
プロ7年目の洗練――。
実は、ここに落とし穴があるのではないかと思うのだ。
無類の調整力を誇ったダルビッシュさえ、メジャーで苦しんだ。
ダルビッシュ有もそうだった。ダルビッシュの最大の能力について、日本ハムのトレーニングコーチ、中垣征一郎はこう語る。
「運動学の中では『調整力』と呼ぶのですが、一流のアスリートは調整力が長けている人が多い。バスケットの名選手、マイケル・ジョーダンなどもそうですよね。右から左に体重移動するとき、ちょっとずれても、センサーで察知して、無意識の内に調整できる。だから、どんな体勢からもシュートを打てる。ダルビッシュもそう。マウンドの傾斜や、風など、バランスを崩す要素があっても、すぐに自分で調整してしまう」
にもかかわらず、メジャー1年目の昨年、ダルビッシュはボールの違いにはやはり手こずった。オープン戦、シーズン序盤と、ボールがすっぽ抜けるなど、制球を大きく乱していた。
つまり、こう思うのだ。洗練されればされるほど、指先の感覚も研ぎ澄まされる。すると、そこが逆にウィークポイントになってしまうのだ。もともと繊細な指先の感覚などは、ある程度、鈍感なままの方がいいのではないか。
精密になるということは、いいことばかりではない。いったん狂うと、調整するのに、いつも以上に時間がかかる。洗練とは、諸刃の剣なのかもしれない。
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