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キャリア晩年を南半球で謳歌する、
デル・ピエーロ“第4のサッカー人生”。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2013/02/19 10:30

キャリア晩年を南半球で謳歌する、デル・ピエーロ“第4のサッカー人生”。<Number Web> photograph by AFLO

ゴールを決めたあと、お決まりの舌を出すパフォーマンスを見せるデル・ピエーロ。ブラジルの名門フラメンゴへの移籍話も浮上したが、本人はシドニーFCの退団を否定している。

38歳になったデル・ピエーロにつきまとう故障の不安。

 監督イアン・クルークは昨年11月に突如辞任。言い残した理由が「デル・ピエーロをうまく使いこなせない。私には荷が重過ぎる」。牧歌的なリーグとはいえ、世界的スターの加入で飛躍的に増加した注目度とプレッシャーに指揮官は飲みこまれてしまったのだ。

 38歳になったデル・ピエーロには、疲労による筋肉系故障の不安もつきまとうようになった。

 昨季最終戦のお別れセレモニーは、まだ誰の記憶にも新しい。艱難辛苦を乗り越えてつかんだ9年ぶりのスクデット。あのとき、名門ユーベで有終の美を飾って、引退を選んだ方がよかったのではないか。

「今となっては確かめる術はないさ」

 デル・ピエーロは、サバサバと一笑する。

太平洋を隔てた恩師リッピからの言葉。

 名将マルチェロ・リッピ(広州恒大)は、昨年10月に中国超級リーグで初優勝すると、シドニーにいるかつての愛弟子からツイッターを通じて祝辞を受けた。今は互いに母国イタリアを離れ、やはり遠い新天地に生きる“カルチョ伝道師”同士。リッピは、CLもワールドカップもともに制した愛弟子を懐かしんだ。

「キャリアの長い時期をともに過ごした。デル・ピエーロがプロの選手として、ひとりの若者として成長する様をつぶさに見ることができた。彼こそ、私の“10番”だ」

 太平洋を隔てた恩師の言葉に発奮したのか、1月の17節ウェリントン戦で、デル・ピエーロは1試合4ゴール+1アシストという大仕事を成し遂げる。うち2ゴールは、いわゆる左45度の“デル・ピエーロ・ゾーン”から放たれた。ファーポスト上端に吸い込まれた美技の連発に、スタジアム中が息を呑んで魅了された。チームは7対1で大勝し、デル・ピエーロも「キャリアで初めてだ!」と興奮を隠さず。勢いづくシドニーFCは、後半戦で調子と順位を上げ始めた。

【次ページ】 キャリアの中で何度も“転生”してきたデル・ピエーロ。

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