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色々あるけど、でもやはり……
“自転車シティ”宇都宮に学べ!
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2012/10/31 06:00
戦後間もなくから餃子が流行っていたという宇都宮。浜松との“餃子戦争”は、昨年の東日本大震災後に和解。浜松の祭りに宇都宮の餃子店が出店するほどに仲良くなった。
宇都宮自慢の自転車レーンなれど、よく見ると……!?
おお、遠くから見ると、まさにあの写真通りである。
だが近寄ってみると……、あれ? 車道と自転車レーンとの間に段差がある。で、歩道と自転車レーンの間にはない。
何かがおかしいな、いったいどういうことなんだろう。宇都宮市交通政策課の田代氏に聞いてみると、話はこうだった。
「いや、ヒキタさん、そこはちょっとだけ誤解がありまして、このブルーレーンは、まだ“自歩道”なんです。あくまで歩道の一部」
ふむ? 私の誤解だったか。田代さんの話では、歩道を削って“車道上自転車レーン”にするのはもともとの理想だったが、いろいろと高いハードルがあった。たとえば歩道上には東電のトランス(変圧器)などがあって、このトランスひとつ動かすのに数百万円の費用がかかるのだそうだ。そのままで車道の中にぽつんとトランスを放り出しておくわけにもいかない。
「だから、まだあくまで歩道の一部の自転車レーンなんです。なかなか宇都宮としてはそこまでできないというのが現実でして」
そうか、残念。いやはや、残念。さても、残念。
もしこのソリューション(歩道を削って車道にした上で自転車レーン)が本当であったら、まさしく日本初の画期的な試みだったのに。
しかしながら、これだって評価できなくはないと思うのだ。現に、生け垣が自転車部分と歩行者部分の間に移されている。車道からの視界を遮断しないようにとの配慮だ。おまけにこのブルーゾーン、片側一方通行である。道路の両端にブルーゾーンを通し、正面衝突と、出合い頭事故をなくした。これはやはりできそうでできないことだ。
悪くない。
宇都宮はやはり奥底で分かっているといえよう。多少甘めだが、めでたさも中くらいなりであると思う。オトナの世界には妥協というものはあるのである。
利用者の意識が低いままの“似非”自転車シティにならぬよう!
というわけで、その短いブルーゾーン部分を通りすぎると、やがて、普通の自歩道になる。もちろん交互通行。日本のどこでも当たり前に見られるデタラメ状態の道路だ。これだけを見ると「どこが“自転車のまち”?」と思う。
他の街と変わらぬ風景の中、地元の高校生たちが行き交う。
不思議なのは彼らのポジションだ。サドルがエラく低くて、ハンドルにぶら下がるようにして乗ってるよ。これ、地元の高校生に流行りの「ぺったんこ自転車」というヤツだそうで、サドルを一番下いっぱいに落として、わざとこういう乗りにくいポジションにしている。これがオシャレなのだそうだ(笑)。
いや、こういうことってあるね。
若者、とくに高校生くらいの年頃には、同じ年代だけに通じる、ミョーなおしゃれ感、カッコいい意識ってのがある。周りから見るといささか失笑、ということになってしまうのだけれど、内部だけには通じるのだ。
私が高校時代を過ごした宮崎市でも、かつて、意味なく首にタオルを巻く「タオラー」というのが流行ったことがあった。普通に言って、最上級の「ダサ」、これぞ「ダサ」としか見えないのだけれど、当の高校生たちにとっては、そのハズシがカッコよかったのだ。ハズシとハズカシは似てるね。ま、一言でいって滑稽でしかないんだが。若気の至りってのはこういうことをいうのだ。
しかしね、そうした高校生に限らず、この町で普通の自転車(つまりママチャリ)、普通のオジさんオバさんを見ているだけだと、別に他市区町村とまったく変わる部分があるわけじゃない。彼ら彼女らは何の疑いもなく歩道を選び、のんきに無邪気に、歩行者を蹴散らしてるよ。
自転車の利用率は確かに高いといえよう。でも、使い方は、別に、だ。
なんだ。自転車のまち・宇都宮つっても、その程度のものなのか……。ということで、私は二荒山神社、宇都宮城などをめぐったのち(いずれも地元の名所)、今度は郊外に出てみることにした。
そこからまた宇都宮の印象は変わっていくことになる。