フットボール“新語録”BACK NUMBER
ブンデスで働く日本人、瀬田元吾。
広告獲得の次に抱く“選手発掘”の夢。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byHitachi Europe
posted2012/08/28 10:31
フォルトナ・デュッセルドルフと日立とのスポンサー契約の発表会見。真ん中に座っているのが瀬田元吾氏。先日、『ドイツサッカーを観に行こう! ブンデスリーガ×ドイツ語』(三修社)を上梓した。
日立から、スポンサー契約に関する問い合わせが。
そして今年7月、ついに蒔いた種が実を結ぶときがやってくる。瀬田の下に日立の関係者から、スポンサー契約に関する問い合わせがあったのだ。すぐさま瀬田は『インフロント』とともに、プレゼンテーションの準備に取りかかった。
こういう契約において、まずポイントになるのが契約期間だ。
一般的にどんな企業でも、スポンサー契約は単年で結ぶ方がリスクが小さい。本当にプラスになるか吟味してから、翌年のことを考えられるからだ。いきなりものすごい人気が出て、翌年の契約料がどーんと上がるという可能性ももちろんあるが。
一方、クラブとしては複数年にしてもらえれば、より経営のビジョンを立てやすくなる。
ただし、契約期間が長くなるほど、スポンサー側に不利にならないように、リーマンショックのような経済危機など、何かあった場合にそなえて付帯条件を考慮しなければならない。つまり2つ目のポイントが、付帯条件の検討だ。
日本とドイツ、異なるビジネス文化をすり合わせてまとめた契約。
瀬田は説明する。
「『インフロント』には契約書のフォーマットがあるんですが、日本とドイツはビジネス文化が異なるため、双方の希望を反映させる作業に時間がかかりました」
『インフロント』のスタッフたちは、これまで何度も契約が直前で実現しなかった経験をしている。話が順調に進んでいるように見えても、「サインの瞬間まで気を抜くな」と言い続けた。発表当日、会見直前に契約書にサインがなされ、ようやく瀬田は張りつめたプレッシャーから解放された。
「嬉しかったのは、日立の方が『あなたがいなかったら、この話はまとまらなかった』と言ってくれたこと。ずっと活動してきたことが、報われた瞬間でした。自分の存在が、日本人がブンデスリーガのクラブで働く流れを作れたら嬉しいです」
今、クラブにおいて、瀬田は新たな仕事を期待されている。それは日本人選手の発掘だ。