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<日本ゴルフツアー選手権への道> 昨季王者・五十嵐雄二、激闘の記憶。
text by
塩原義雄Yoshio Shiobara
photograph byTaku Miyamoto
posted2010/06/01 10:30
悪いパターンと弱気を克服して掴んだ3日目の4位タイ。
日本ゴルフツアー選手権開幕――。
初日、4アンダーをマークして4位タイの好発進だった。2日目もドライバーショット、アイアンショットともに好調でフェアウェイ、グリーンを確実にとらえていった。2日間続けての4アンダーで通算8アンダー。首位タイに上昇した。3日目は、最終組でのスタートとなった。いきなり連続ボギー。
「いいスタートを切っても、3日目にスコアを崩してしまうというのが、自分のパターンのようになってしまって……。自分のゴルフに対する絶対的自信がないというか、気持ちばかり先行して、空回りしてしまうというか。連続ボギーのスタートで、またいつものパターンかな……なんてこともチラッと思ったけど、“この難しいコース設定なら、みんなも苦しんでいるはず”と自分に言い聞かせて、ペースを取り戻せました」
その後3バーディー、2ボギーとして通算7アンダーに踏みとどまった。4位タイ。順位は落としたが、首位とはまだ2打差。いつものパターンから脱却できたことで、ひとつの関門を通過したような気持にもなっていたという。
「パーを拾いまくって、粘っこいプレーを続けようよ」
最終日。幼なじみで帯同キャディーをつとめてくれている榎本睦とスタート前に話し合った。
「昨日みたいに踏ん張って、崩れなければ上位でフィニッシュできるだろうな」
「パーを拾いまくって、粘っこいプレーを続けようよ」
「そうだ、パーセーブだよな」
上位選手がスコアを落とす中、五十嵐はフロントナインをすべてパーにまとめて、いよいよサンデーバックナインに。10番は距離の長いパー4だ。本来はパー5ホールなのだが、試合ではパー4に設定された。五十嵐は第2打でグリーンをとらえられず、アプローチも寄せ切れずにボギーにした。不思議なことに動揺はなかった。
「だって、あのアプローチショットは、どうやっても寄せ切れる状況ではなかった。ピンまで4メートルぐらいでしたか。でも、自分としては最高のショット。あの状況でできることの全てを注ぎこめた。それでもボギーだったのだから、素直に結果を受け入れられましたよ」
ホールインワンかと思ったが……ボールはピンの根元に。
11番はパー。ゴルフの流れは、変わっていなかった。ショットも好調さを維持できていた。12番パー4。2打目のショットがピンそば30センチについた。もちろん、バーディー。さらに13番パー3ホールでも会心のショットを打ち出した。打ち上げでピンの根元は見えなかったが、グリーンを取り囲んだギャラリーから大歓声が沸き上がった。ショットの手応え、そして、大歓声。五十嵐は「ホールインワンだと思いました」。
最終日、同じ組でのラウンドとなっていたのは、練習ラウンドで仲間入りを許してくれた鈴木亨だった。その鈴木もホールインワンだと思い込んでハイタッチで祝福してくれた。
グリーンに向かう。ボールは……。ピンの根元に止まっていた。