ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
様々なトラブルを乗り越えて……。
室伏、銅獲得で示した百戦錬磨の証。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA
posted2012/08/06 11:40
37歳で臨んだ3度目のオリンピック。後半、距離を伸ばすことはできなかったが、今季自己ベストを記録するなど、大一番で強さを見せた。
予想外の判定や競技中断にも動じずに投げきった室伏。
それにしても、通常なら、1、2投目で思わぬ出来事が起きれば、動揺してもおかしくはないし、パフォーマンスに大きな影響が出ても不思議はない。動揺や苛立ちを引きずることだってあり得る。
しかし室伏は、予想外の判定や競技中断にも動じることなく、自分を取り戻し、見事に投げきってみせた。
室伏は、2投目の前、横になっていたときの心境を、こう明かした。
「しっかり呼吸を整えて、落ち着かせるようにしていました。まだかまだかとなると疲れてきますので、しっかり呼吸を整えてもう一回ウォーミングアップをして、臨みました」
そしてその意思の通りに立て直すことができたからこその、2、3投目であった。
男子100m決勝と重なり、会場がざわつくなかでも保った平常心。
そういえば、6投目の時点でも、2投目時点で競技中断があって延びたため、ウサイン・ボルトやヨハン・ブレークらが出場する100m決勝と重なった。
当然、100mが終わった後に室伏は投げることになったわけだが、それでもしばらく歓声はやまず、観客席はざわつき、やりにくい場面であったように思える。
フィールド、トラックで種目が同時進行する陸上ならではの場面ではあったが、それでも、室伏はファウルにもしないで、きちんと76m台を記録した。
こうして室伏は、2004年アテネ五輪の金メダル以来、2大会ぶりのメダルとなる銅メダルを獲得することができた。
そこには、第一線で数々の大きな舞台を経験してきた百戦錬磨のベテランならではの落ち着きもまた、大きな要因としてあったのだ。