野球善哉BACK NUMBER
春の王者が夏をも制するのか――。
大阪桐蔭とライバルたちの実力は?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKatsuro Okazawa/AFLO
posted2012/08/07 10:30
エース藤浪晋太郎擁する大阪桐蔭は2012年のセンバツを圧倒的な力で制した。春夏の順番で甲子園を連覇した高校は、過去6校しかいない。
優勝候補の愛工大名電の初戦は、難敵の沖縄・浦添商。
今大会No.1左腕・浜田達郎のいる愛工大名電も当然優勝候補だ。だが、このチームにとっては初戦突破が至上命題となる。
というのも、プロ野球選手を多く輩出し、'05年のセンバツ大会を制覇している愛工大名電だが、実は夏に限ると苦戦が続いているからだ。倉野光生現監督政権下では、勝てていない。初戦の相手が沖縄県代表の浦添商というのも、彼らにとっては大きな試練になるだろう。
倉野監督も沖縄県勢との対戦に警戒感は強い。
「沖縄県はキャンプ地でもあるし、少年野球も盛んだし、野球熱も高いですよね。浦添商さんは、興南や沖縄尚学を倒してきている。全国区のチームに勝ってきているわけだから、手強いチームですね」
例年、打てずに敗れることが多かった。だが、今年はエース・浜田の存在がある。「(浜田は)地区大会の疲れも取れているだろうし、いろんなことを周りから言われますけどね、県大会の決勝くらいからは良くなっていますし、心配はしていない」と倉野監督。鬼門の『夏の初戦』を乗り切れるか。その先に、愛工大名電の経験が生きてくるはずだ。
実は初出場初優勝して以来、春夏連続出場がなかった大阪桐蔭。
さて、春夏連覇を狙う大阪桐蔭である。
西谷浩一監督は「先を見据えた戦いはしないんですけど、目標として春夏連覇というのは掲げている、ウチにしかできないことですから」と語る。
とはいえ、大阪大会のころから優勝候補に挙げられていた大阪桐蔭だが、今年に関して言うと、抱えるテーマが多くあった。
過去5回、夏の出場を果たしている大阪桐蔭は、優勝候補として大阪大会を勝ち上がったケースが初出場初優勝した'91年の時しかない。
岩田稔(阪神)や中村剛也(西武)を擁した'01年、2年生4番・平田良介(中日)らオールスター軍団とまで騒がれた'04年、投打の怪物・中田翔(日本ハム)がいた'07年では、全国的に優勝候補との評判を得ながら、府大会で涙を飲んできたという過去がある。スカウティングから育成・強化、全てが上手くはまり最高の仕上がりで夏を迎えた年のチームほど、甲子園に来ることができなかったのだ。
西谷監督は言う。
「全部、決勝で負けてきました。だから、今年のメンバーには越えなければいけない壁があるという話をしてきました。一つはセンバツを優勝して夏に甲子園に出られないというのはあってはいけない。二つ目は去年の夏の府大会決勝で敗れた悔しさがあるということ。三つ目は初出場初優勝した時以来、春夏連続出場がないということ、これらを越えなければならない、と。全てを払しょくしたいと思っていましたし、選手からも『夏に勝って、初めてセンバツを優勝した意義がある』という言葉が出てくるようになりました。彼らに頼もしさも感じましたし、春とは違う景色の甲子園で勝負したい」